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主のいないクイーンサイズのベッドに あぶない女83


第83章

俺は約束通り、午後7時にOホテルの敦美の部屋に入った。しかし、敦美の姿はなかった。

たしか、午後一番に警察に向かったのだから、事情聴取であれば数時間で解放される筈だった。

「ということは……」俺は、主のいないクイーンサイズのベッドに横になりながら、声に出して、敦美への容疑が濃厚になった事を予感した。

しかし、明白な証拠もなく、曖昧な動機で逮捕拘留と云うのは、いくらなんでも乱暴すぎる。

敦美のことだから、ノホホンと買い物でもしているのかもしれなかった。無論、シビアな状況の想像から逃れる為の想像に過ぎなかったのだが。

時計は午後8時に近づいていた。出頭した警察署、新宿西警察署に電話を入れて、敦美の所在を聞く手もあったが、捜査上の問題なので答えられないと言われそうだった。

俺は渋々携帯に手を伸ばした。忌まわしい兄の携帯をコールしていた。

「そうなんだよ。知り合いの妹さんが、新宿西警察に参考人で呼ばれたのだけど、夜になっても帰宅していないらしいんだよ。それで、直に聞く手もあるんだけど、兄貴の筋から聞いて貰えないかと思ってさ……」

「一昨日の新宿の片山亮介と云う人物が殺された件での聴取なんだけどね……」

「帰宅していない妹さんが、その殺された片山亮介って人の奥さんなんだよ」

「まさか、俺の彼女って話じゃないから安心してくれ。問題があるようなら、直に電話してみようと思うんだけどね……」

「うんうん、それは有りがたい、恩に着ますよ。ハイハイ、いずれまとめてお返ししますよ。それじゃ、電話待っていますから、よろしくです」

フッと俺は大きくため息をついて、携帯を切った。また、兄貴に借りを作ってしまった。二つほどの借りの記憶があるから、これで三つ目だ。もしかすると、記憶外にある借りもあるのかもしれないが、記憶にある限り三つ目だ。

兄貴からの電話が先か、敦美が戻ってくるのが先か、などと思いながら、暇に任せてテレビのリモコンを押した。

丁度、午後十時のニュースが始まっていた。仮に、片山の殺人事件で、敦美が逮捕でもされたのであれば、最期の方であっても、報道するに違いないと思った。

しかし、一時間が過ぎても、片山亮介の殺害が妻の敦美による事件であったという報道はなかった。

仮に重要参考人であっても、拘留することは出来ないので、翌日にならない内に警察から解放される筈だった。

つまり、最悪でも午前零時過ぎには、敦美はOホテルに戻ってくる筈だった。それにしても、二晩続きで家を空けるのは気が引けた。

いくらなんでも女房に一言くらい言われそうだった。そういう事を言うことで、夫婦の証を確認する作業が、あの人にとっては重要な儀式のようなものだった。

亭主が何をしてようと興味はないが、世間体を繕うための情報は提供せよ、と云うのがあの人の言い分で、実に合理性があった。

その点では、俺はいささかも異議を唱える気はなかった。あの人の、合理性や立場主義を認める夫である限り、俺には自由があるのだから、そのくらいの不都合は享受しても罰は当たらなかった。

つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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