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敦美の姿はなかった あぶない女55


第55章

「12万、それって相場よりも高いのかな?」

「そう、高くも安くもないってことか……、だったら、明日にでも見に行きたいけど、そちらの都合は……」

「そう、それは良かった。それで、敷金とか礼金とかは?」

「へえ、敷金が1か月で、礼金は無しか……、今どきは、そういう傾向があるのか……。いずれにしても、それで条件的には問題ないよ……。そうだね、保証協会で処理した書類を作成して貰えば良いよ。金で迷惑をかけるような人じゃないから……」

早速、敦美が泊まっているOホテルに電話を入れた。

“えっ、中井駅……。新宿に近すぎないかな?”

「近すぎるけど、君のフィールドかと思ってさ……」

“たしかに、慣れ親しんだ街だけど……”

「昔の男でも住んでいるのか?」

“違うよ、直感的に、近すぎるって思っただけ。でも、考えたら、迷わずに暮らせるわけだから、悪くはないのかな……。そうだね、伊勢丹に行く時もタクシーで直ぐだし……。そこにするよ”

不動産屋と約束した時間は午後二時だった。一時にホテルに迎えに行くと伝えると、十時に来てほしいと、敦美は強く主張、いや、哀願した。

その余裕の三時間で、どのような行為が繰り広げられるのか、想像に難くはなかったが、この際、敦美の心と身体へのケアは必要なのだろうと、快く応じた。

約束通り、俺は十時にOホテルの***号室のドアをノックした。

しかし、欲情した女の声は返ってこなかった。ドアにドアカードをかざし、部屋に入ったが、敦美の姿はなかった。

バスルームにも、トイレにも、敦美の姿はなかった。

俺の敦美と云う女に関して描いていたストーリーが、根こそぎ葬り去られた。そんな気分で、無人のデラックス・ダブルの部屋を呆然と眺めていた。

敦美が、突然ホテルの部屋から外に出る可能性は、俺の知る限りゼロだった。旦那が、Oホテルに敦美が宿泊している情報を得て、拉致したのだろうか。

しかし、拉致などの行為が実行されたような形跡はなく、ベッドメークを済ませた二つの真っ白な枕は、主を失い寂しげだった。

メモのようなものが残されていないか、部屋中探してみたが、メッセージ性のあるものは見つからなかった。

さて、どうしたものか……。

俺が敦美を探す思いつく手がかりは、携帯だった。

そうだ、携帯を鳴らせば、敦美が部屋にいない理由は即座に知ることが出来ると云うことだった。

意外に、人間はいざとなると、あまりにも単純なことに気づかないものだと苦笑いしながら、敦美の携帯を鳴らした。

俺の携帯がハウリングしていた。いや、ハウリングではなかった、ベッドの下から、その音は聞こえていた。

……敦美が携帯を忘れていった……?考えにくいことだった。

間違って落としていったか、慌てて出ていく事情があったのか、いや、やっぱり強引に連れ出されたのだろうか……、俺には、打つ手はまったく与えられていなかった。

無為な待ち状態だが、取りあえず不動産屋に、今日の約束をキャンセルする電話するのが精々だった。顔見知りの不動産屋は、今日一日は返事待ちの物件にしておくと云う話だった。

それにしても、敦美が携帯を置いていっていった以上、こちらから連絡する方法はなかった。唯一、このOホテルの部屋で、敦美からの連絡を待つ以外、方法はなかった。

つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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