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女房に毒を盛る亭主 あぶない女 54


第54章

敦美に、こんな町に住みたいと言った希望はなかった。

生まれも育ちも新宿なのだから、他の町がどのような住み心地か知る由もなかった。彼女の目的は、自分の女房に毒を盛る亭主から逃げ出す緊急避難、当面の安全が目的だった。

そういう意味で、住む部屋の環境さえ良ければ、文句を言わない筈だった。無論、追々には、住む町の環境などにも注文が出るかもしれなかった。その点は考慮しておいた方が良さそうだった。

直感に過ぎないが、中井駅か上石神井駅周辺なら、そのような不満も少ないような気がした。ファックスで送られてきた物件には、上石神井の一軒だけだったので、中井、上石神井中心の物件を追加するように、不動産屋に依頼した。

敦美の住まいのことを手配しながら、俺は違う女のことを考えていた。そう、いま最も問題なのは、敦美の部屋探しではなく、新井寿美と云う女のことだった。

屋上屋を重ねるように関係する女を積み上げていく。そのことへの根源的問題の解決は、おそらく、どこかで必要になるのだろうが、今ではない。心の病の一種なのだろう、ぼんやりと、したり顔の精神科医の顔が浮かんできた。なぜか、目に浮かぶ精神科医も女だった。自分でも、呆れるほどの執着力だった。

俺の女コレクター性癖は異常の域に達しているのだろうが、性的嗜好は、所謂、正常の範囲にある。誰も俺を異常者だとは思っていない。

女の狩人、そんな風に自分を分析することもあったが、狩人であれば、一件落着という風情で喰い散らかして去っていくものだ。ナンパ師や強姦魔は、狩人として、その場限りで関係を完結しているのだろう。しかし俺の場合は、狩りをした獲物を抱え込むのだから、どんどん荷物は重くなる。

そして、それぞれの女に、それぞれの感情を持ち合わせるのだから、頭も心もフル回転になる。財布の底が常に覗き込める状態になっている。

「病気だな……」俺は呟きながら、電話機から、十枚近い紙が吐き出す映像を目にしていた。

吐き出された物件案内の紙を拾い上げながら考えていた。あのシャネルスーツの女に連絡するのは、何時がいいのだろうかと。

女が置いていった一万円札が、女と俺を繋ぐ重要なファクターだった。一枚の札があるお陰で、俺はいつでも女に連絡を取る必要性を持つことが出来た。

それが、計算された一万円札であるのかどうか、その辺ははっきりしなかった。あのまま、俺が寝込んでしまえば、あの一万円札は追加料金で消えていたのだから、俺が女に連絡することが出来るキッカケではなくなっていた。

いや、女が置いていった一万円で追加料金を支払い、ぬけぬけとしていられる筈もない。やはり、あの一万円には、シャネル女の強いメッセージ性が存在したと考えるべきだった。

しかし、と思った。

あの女が、そこまでする理由があるのだろうか。いくら自惚れの強い俺でも、今さら女に買われるほどの魅力があるとも思えない。ご立派な一物を所持していたから云々と云う解釈も馬鹿げていた。

まぁ、このような場合、多くはこちらの考え過ぎで、相手側は何も深く考えずに行ったこと、そういうことが多かった。

課題を与えられたという自意識がもたらす一種の自惚れで、どうでも良い理由とか、理由すらないことが多いものだった。

寿美に対して、シャネルスーツの女と云う俺のイメージ作りが、強く作用しただけで、彼女取った行動は、極めて日常的行為だったのかもしれなかった。

しかし、些細なことに、魂を押しつけることは、考える側にとっての、一種ゲームであり、気持の旅にもなっていた。

俺の自意識は、何時もそうだ。些細なことに意味づけをして、ことを、殊更に大きな問題にしてしまう性癖のようなものがあった。しかし、その時間を無駄にするような心の動きが、時の経過と伴に相手側の情感に強く作用し、遂には相手側の心を動かすこともあった。

電話機から吐き出されたファックス用紙の中から、中井駅徒歩5分、1DKの物件を片手に、不動産屋に電話を入れた。

つづく

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鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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