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結衣との関係2-3 私も汗流してきますから…


 第2章―3

 「ここにシャツと下着置いておきますから」女が大きな声で、俺の期待を裏切った。

 「下着まで買ってきたの」俺も大声で答えた。

 「はい、シャツが濡れたら、パンツも濡れますよね」女はなんの衒い(てらい)もなく、大きな声で応答した。

 ……考えてみると、単に気がつき過ぎる女と云う事なのかもしれない。俺の邪(よこしま)な気持が女の言動を曲解しているだけのようだ。何というツマラヌ話だ……

 俺は苦笑しながら身体を洗った。何の意味もないのはわかっていたが、股間を入念に洗う行為に、馬鹿で助平な男だと思わずにはいられなかった。

 バスルームを出ると、脱衣所にある洗濯機が回り、俺の見慣れたシャツとパンツが無くなっていた。ランニングの時くらいしか穿かない半ズボンの上に、真新しいパンツと何やら細かい英語文字が模様になったTシャツが置いてあった。

 ……洗濯までするのは行きすぎじゃないのか?まさか真新しいパンツとシャツで家に帰るのも拙いだろう。乾くまで居ろとでも言うのだろうか。たしかにそう云うことになる。女の買った、真新しいパンツとシャツで帰ることは、流石に拙い……

 俺の腹は都合よく決まった。こうなったら、女の家に洗濯物が乾くまで居座るしかない。

 猛烈に抗議でもうけたら出て行くことになるが、女がそのような事を言うとは思えなかった。

 リビングに戻ると、エアコンの空気が俺の肌を刺した。幾分寒過ぎると思ったが、あえて口にはしなかった。先程までソファーの片隅で寝ていた子供の姿がなかった。女は何事もなかったように、キッチンに向かい洗いものをしていた。

 「あら早かったですね、シャツとパンツの大きさ大丈夫ですか」女の口調に、日常から逸脱した出来ごとの最中にあると云う感じは一切なかった。

 “雇われ亭主”と云う言葉はないが、どこかに“ゴッコ”の雰囲気があった。

 夢のようでもあった。

 しかし、女と俺の年齢差を考えると“雇われ爺”の方が妥当かと思った途端、気分は滅入った。

 「ピッタリです。お幾らでした?」

 「いりません、私が思いついて買ってきただけだから」

 「そういうわけにはいかないよ、払わないと…」

 「だったら、お帰りの時に請求しますね」女がふり返って、笑顔をみせた。どこか艶めいた目つきになっていると思ったのは、俺の錯覚なのだろう。

 「私も汗流してきますから、テレビでも観ていてくださいね」女はキッチンの引き出しから灰皿を出し、テーブルに黙って置いた。そして、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、馴れた手つきでプルトップを開けるとテーブルに差し出した。

 「きれいなグラスがないから、このまま飲んでください」女は俺が赤の他人であることを無視するような態度に終始して、リビングを出て行った。
 つづく

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結衣との関係 2-2 女の指の感触と妄想が


 第2章―2

 「お父さんは大丈夫でしたか」

 「えぇ昨年脳梗塞に罹って、半身不随なんです。漸く私も馴れてきましたけど…」

 「それは大変だ、寝たきり状態なの」

 「ほぼそんなものです、変に動かれるより面倒みやすいとも言えますけど…」

 女は、特にその状況が苦痛だと思っている節もなかった。

 俺の頭の中には、様々な疑問が湧きでていた。しかし、聞き出したら切りのないほどの事情が女にあるであろうことは察しられた。また、それを聞くことで、何もしてやれない筈だし、火中の栗を拾う破目にもなりかねなかった。気の利かない男と思われている方が気は楽だった。

 「それじゃ貴女も忙しいですね。お陰で汗もひいたようだから退散しないとね」俺は軽くリビングのソファーから立ちあがった。

 「駄目よ、シャツが全然乾いていないわ」女は突然俺の背中のシャツの乾き具合をたしかめるように、背中に手のひらを当てた。女の指の感触と妄想が混じり合い、身勝手な性的接触を感じた。

 「完全に乾くのを待っていたら、夜中になるよ」俺は笑いながらふり返った。

 「そうだ、シャワー浴びてください。父のオムツと一緒にシャツ買ってきましたから、着て頂かないと」女は半ば強制的にシャワーを浴びさせようとしていた。

 女は背中に再接近、追い立てるように、俺をバスルームの前まで誘導してしまった。

 ……どうも奇妙な按配になってきた。シャワーを浴びている最中に美人局が入って来ないとも限らないわけだよな。それも女と何かあったのならまだしも、子供をおんぶしただけで、脅されちゃ堪ったものじゃない。今日はカードも免許証も持ってきてないから酷い事にはならんだろうが……

 そんな事が頭に浮かんだが、俺は踏ん切りをつけて衣服をはぎ取り、バスルームの扉を開いた。

 ほんの二時間ほど前に出会ったばかりの女の家の風呂に入っている奇妙さはあったが、それ以上にシャワーのノズルから噴き出される温水は心地よかった。

 バスルームの前の脱衣所の扉が開いた。

 ……おいおいまさか、一緒に入るなんて言うんじゃないだろうな……
 つづく

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結衣との関係 第1章まとめ


結衣との関係 第一部  鮎川かりん (原作・饗庭龍彦)

第1章-1

新しい女、理紗子と云う人妻を得たからといって、俺の女体狩人生活が特に変わったわけではない。しがない二流ライターの仕事もぽつぽつとこなしていた。ポツポツとしか仕事が来ないのだから、常にポツポツと仕事をすることになる。主に社会政治関連が中心なので、世の中が混乱すればするほど仕事が増えると云う因果な商売だった。

人の不幸で飯を食う職業。医者に、弁護士に、坊主が通り相場だ。しかし、その他にも多くの人種が、他人の不幸によって飯を食っている。ライターなんて職業も、その範疇だ。マルチ商法に引っかかった不幸な人々リストで飯を食うやつもいる。社会面の事件記者やルポライターも同様だ。警察官、消防士、自衛官も、かなりの範囲で他人の不幸で飯を食っている。社会保障制度に携わる政治家、役人、彼らも広義において不幸を餌に飯を食べている。つまりは、人間社会では不幸と云うものが日常茶飯事な出来事に過ぎないと云うことなのだろう。

仕事の時は、半日以上椅子に腰かけパソコンに向かい、コーヒーと煙草に囲まれる生活なのだから、健康に良いわけがない。時間が空けば、女とホテルにしけ込んで、セックス三昧なのだから、太陽に当たる必然性すらなくなっていた。かかりつけの医者からは、“臀部筋が相当弱っている、太陽に当たること、そして歩くことを心掛けろ”と注意を受けていた。まさか医者に向かって“セックスは臀部筋を鍛えないのか”と聞くわけにもいかず、余裕がある時は嫌々近所の公園を三周程度歩くことにしている。当然、晴れている日に歩くので、それなりに太陽にも当たるので、一石二鳥だった。

そんな或る日、俺は結衣と云う女に出遭った。東日本大震災後と福島原発事故発生以来、立て続けに仕事が舞い込み、一カ月半ぶりの臀部筋鍛錬の公園だった。既に初夏の陽ざしが公園に注ぎ、動かずに日陰にいると肌寒さが残っていたが、三周走り切った俺はうっすらと汗をかいていた。
いつもの水飲み場で顔を洗い、蛇口から水をがぶ飲みしようと近づいた時、水場は近所のママ軍団に占領されていた。

……糞!なんてことだ、いまいましい……

しかし、世の中早いもの順程度の常識は知っているので、少し離れた所からママ軍団が去るのを待った。五分、十分と待ってみたが、彼女らと、その子供たち軍団は、その場を立ち去る気配すらなかった。距離を半分に縮めて、彼女らに俺の存在を知って貰おうとしたが無駄だった。あきらめて、他の水場に行こうかと思った時だった。

「いつもあの人達、水飲み場を占領しているの」突然、後ろから声が聞こえた。

ふり返ってみると、三十前後の女が佇んでいた。その横には二歳ほどの女の子がしゃがみ込んでいた。どうも話の内容から水場占領のママ軍団とは異なる種族のようだった。

「いつも長いのかな?」

「たぶん、日が陰るか、誰かの子供がグズルまで、水遊びさせているの」

「プールみたいなものだね」

「そんな感じ、目の前のマンションの人達みたい」

「そう。それで、いつもアナタは迷惑しているわけだ」

「いつもは、もう少しゆっくり出てくるのだけど、今日はこの子が早くから“コウエン、コウエン”って煩いものだから…」そう言って、女は自分の子供に目線を向けた。

「ほら、マミちゃん、土を触っちゃだめよ。お手てが真っ黒でしょう」女は怒ると云うわけでも、注意すると云う程の気力も伝わらない気だるい声音で話した。

「ついてきて下さい、手を洗わせると良いですよ。僕も水が飲みたいしね」俺は、女の言葉に勇気を貰い、そこにママ軍団が居ることを無視するような勢いで水場に向かった。ふり返らなかったが、その女とマミと云う子供はついてきている気配だった。

「ちょいと失礼」俺は有無を言わさぬ強い視線を送り“どけろ!”と心で叫んだ。ママ軍団が突然の闖入者にたじろぎ、あっけにとられている間に蛇口を占領し、水を勢いよく出した。

「マミちゃん、先に手を洗いなさい」俺はマミという子供の祖父さんのような振舞いで、女の行動を促した。

女は俺の意図を嗅ぎ取ったのかどうか判らなかったが、その言葉には従った。ママ軍団は一歩水場から退き、遠巻きに逆襲のチャンスを狙っている視線を送っていた。委細構わず、今度は俺がガブガブと水を飲んだ。女たちの百倍無神経なオッサンを演じる事で、ママ軍団の逆襲の芽を摘み取った。


第1章-2

マミと云う子供の手を洗わせている時、西に傾いた陽ざしが、女の下半身を透けさせた。少し太めな腿のシルエットを俺は垣間見たが、ただそれだけの事だった。二の腕なども太めだろうか、と目ざとく視線を走らせた時、女が季節外れの長袖を着ている事に気づいた。案外人間の目撃能力などとは、このようなもので、先程言葉を交わした女の長袖さえ気づかない程度のものだった。どうして長袖なのだ、紫外線対策だろうか等と考えたが、それは一時のことだった。

俺は水場から少し離れた芝生コーナーでひと眠りしたい気分だった。ただ、マミと云う子供の爺様の素振りをしてしまった都合上、“それじゃあ”と声を掛けて別々に行動する不自然さを憶えた。女もそれを感じていたのか、俺に寄り添うような態勢で、水場を離れようとしていた。

「しばらく一緒にいた方がいいみたいだね」俺は笑いながら、女に声をかけた。
「そのようです、アノ人達まだ睨みつけているみたい」女は怖がっているというよりも、俺の咄嗟の演技に気づき、一緒に愉しもうとする気配があった。

「少し先の芝生で寝転びましょう、そのうちに彼女たちも飽きますよ」

「ですね、ご迷惑でなかったら…」

「大丈夫ですよ、いずれにしても寝転ぶつもりでしたから」
「それじゃあ私たちも寝転びます、マミちゃんもう一度芝生だよ」女は子供に語りかけながら、なぜか楽しそうな声を出していた。

……なんとも奇妙な気分だな。ことの成り行きとはいえ、見知らぬ女と、その子供と芝生で寝転ぶか……

俺は委細構わず、芝生に寝転んだ。本当に身体を伸ばしたかった俺の身体は声こそ出さなかったが、満足感に満ちていた。数分間は記憶があったが、いつの間にか居眠りをしていたようだ。何か夢まで見たようだが、何の夢だったか覚えてはいなかった。ほんの僅かなまどろみだったのだろう、女と子供は俺に異常接近して、芝生の間から顔を出すクローバーを摘んでいた。

子供のまだ乳臭さと、女のパフュームらしき匂いが鼻孔をくすぐった。女と子供のニオイ包まれ、俺の男は僅かに覚醒していた。横座りした女の膝頭が時々割れ、白く肉付きのいい太腿が垣間見えた。性的に、俺の好みの太腿ではなかったが、観賞するぶんには肉付きが良い方が好ましいものだ。

「気持よさそうに寝てらしたわ」女が親しげに笑いかけてきた。

「あぁ何か夢まで見ていたらしい。まさか寝言は言わなかったでしょうね」俺は女の太腿の奥が見えそうだと思いながら、必死で目線を遠くに泳がせた。

「まだアノ人達居ますよ」

「そうだね。そろそろ、家に帰る時間ですか」

「いえ、特に急いではいません。ただ、蚊が飛んできているので、マミが刺されるかも…」

「そう、じゃあ僕も公園の出口まで一緒に行きますよ」

「スミマセン、なんか余計な事につき合わせてしまって」

「いやあ、ことの成り行きだからね、こう云うこともあるものです」俺はもう少し横になっていたい気持を払いのけて、女の心配につき合うことにした。

公園の出口に向かって歩き出すと、マミと云う子供が俺の指を掴んだ。突然のことに、俺は一瞬ぎょっとしたがマミと云う子供のなすがままにしておいた。

「マミちゃん、駄目よ、オジサンの手を握っちゃ」

「イヤっ!パパの手だもん」

「構いませんよ、柔らかくて気持が良い。そのままにしておけば良いですよ」

俺は子供の汗ばんだ小さな手のひらの捉われ人となり、強制連行される姿で公園の出口に向かった。ただ、2歳から3歳くらいの子供のパパは絶対に俺より断然若いのに、と訝しさはあった。しかし、あえて女に問いただす問題でもなかった。


第1章-3

公園の出口にある交差点に出た三人に別れが待っていた。俄か祖父と孫の関係は終わろうとしていた。

「それじゃぁ此処でお別れですね。僕は左側だから…」

「ありがとうございます、何となく私も楽しかったです。さあマミ、オジサンにサヨナラしないとね」女がマミと云う子供の手を、俺の手から引き離そうとした。子供の指先が激しく俺の手の平に食い込んだ。

信じられない強さで、俺の手にしがみついた。一瞬、何が起きようとしているのか、俺は状況判断に迷った。マミと云う子供が俺と離れたくない理由が判らなかった。

母親と二人だけになるのを嫌っている様子もなかった。特に子供の身体を見る限り、虐待のような外傷も見当たらなかった。

「さぁ、マミ、オジサンの手を離しなさい」女は強く子供に言い放つと、力づくで手を引き離そうとした。その時、マミと云う子供の激しい叫びが交差点に響き渡った。当然、交差点で信号待ちをしている人々の視線が一斉に、俄か家族の三人に注がれた。

最悪な事態だ。知り合いから目撃されるかもしれない。俺は冗談抜きに、誘拐犯に仕立てられてしまう恐怖を感じた。

「ヨシ、マミちゃんわかったよ、オジサンがおんぶしてあげる」俺は咄嗟にマミと云う子供への懐柔に出た。

「さぁ行きましょう、家までつきあいますよ」俺は女に目配せをして、道案内を頼んだ。

「ご迷惑でしょう、家までなんて」

「今の状況の方がもっと困るよ。まぁ家の近くまで行く間に寝るんじゃないかな。どっちの方向ですか」俺は冗談っぽい口調で、女に道案内をするように促した。

「すみません、本当にご迷惑かけてしまって…」

「もう気にしなくて良いですよ。お互い、危機を乗り越える方が先決だしね」

俺がマミという子を背負い、女がその二人に寄り添って歩く。余程接近して見ない限り、仲の良い家族三人の散歩の姿だ。俺の背中でしばらく「パパ、パパ」と耳元で煩かったが、案の定、女の子は深い眠りに入っていた。

……それにしても、何故この子は俺のことを“パパ”と呼ぶのだろう。現実のパパを知っていたら、俺をパパだと勘違いするのは奇妙だ。パパと見知らぬ男との区別がつかない程幼いわけでもないのに……

余計な詮索だとは理解しつつも、先程垣間見た女の白い柔肌と重なり合って、どんどん妄想はあらぬ方向へ移行していた。女の子の高めの体温は容赦なく俺を包み込み、背中に汗を滲ませた。

11.03
第1章-4

「どの辺ですか」俺は女に何気に尋ねた。

「重いでしょう、すみません。もうすぐですけど、替わりましょうか」

「いや~、替わらない方が利巧ですよ。半端に目覚められても困るからね」俺は笑いながら答えた。

事実、また大騒ぎされたら困ると云う気持と幾分の冒険心が頭をもたげていた。俺は俄か家族がいつの間にか本物の家族になってしまうような妄想を片隅に抱えて、女の道案内に従った。

「あそこのボロ屋です」と女が指差した先には一戸建ての家があるだけだった。俺のイメージがひとつ壊された。賃貸のマンションかアパートに住んでいると思い込んだ典型的核家族のイメージまでが壊れかけていた。

「ほう立派な一軒家ですね」俺は小ぶりだが建売ではない塀に囲まれた一軒家の玄関に佇んだ。

「本当にご迷惑おかけしました。いま降ろしますので…」女がすっかり寝込んでしまった子供を、俺の背中から降ろした。

「あら大変、背中が汗でびっしょり。どうしましょう」女は子供を抱えながら、泣きそうな表情を浮かべた。

「歩いてるうちに乾くでしょう」俺はどうしようもない気持の悪さを背中に感じながらも、玄関先から踵を返す覚悟を決めていた。

「それじゃ、チョット貴重な体験をさせて貰いました、ありがとう」俺は女が何らかの提案をしてくることを僅かに期待したが、意味もなく佇む不自然さに耐えられず踵を返した。

「やっぱり駄目です、汗を流さないと!」女が俺の背中に向かって強い口調で声をかけた。

「えっ?」

「このままサヨナラは気がひけます。申し訳ない気持が残って駄目です」俺は女の言葉を理解するために、ひと間の間隔があった。

「そう言われても、まさかアナタの家でシャワーを浴びるわけにはいかないでしょう」俺はふり返って、女に語りかけた。

「そうです、そうしてください。誰もいませんから、シャワー使ってください」

……おいおい、ありえないだろう。万が一、旦那が早引けでもして帰宅したらどうなるというんだ。間男に間違われるのがオチだろう。間男のようなことをしたのなら覚悟も出来るが、シャワーだけで間男は、あまりにも悲しい……

「いや~、ご主人に悪いから、やめておきましょう。貴女ともっと話がしたい誘惑はありますけどね」俺は冗談交じりに、女を軽く口説いた。

「主人はいません!」女は俺の思惑を知ってか知らずか、断固旦那が居ない、と宣言した。

「ご主人がいない?でもお嬢さんが…、いや余計な詮索だな」

「良いんです。居たけど、もう居ないんです」女は嫌に明るく答えた。

「ほう、追い出したんですか」俺も気軽に言葉を返した。

「ハイ、追い出しました。マミが1歳になる前に…。兎に角、お入りください、汚していますけど」女は子供を抱えて、玄関のカギを開け、俺を招き入れた。

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結衣との関係2-1


第2章-1

 見ず知らずの男を家に招き入れる女の不用意さが、訝しくもあり、都合の良い按配だとも思った。

 多少の縁はあったわけだが、数時間前には全くの見ず知らずだし、俺が何処の誰であるかもわからないわけで、女の行動は無分別だった。

 女に通された部屋は小ぶりのリビング兼ダイニングと云う感じだった。日常の細々としたものや子供のオモチャが程々に散らかる、ごく普通の部屋だった。

 玄関を入った瞬間に鼻孔をよぎった僅かな異臭は、外からのものだったらしく、リビングに異臭はなかった。

 「いま、エアコン入れましたから、しばらく涼んでいてくださいね。そうだ、飲物は麦茶で良いですか」

 「麦茶、それはありがたい」

 「あっ、それともビールにしましょうか」

 「まさか、ビールは駄目ですよ、麦茶をお願いします」

 「マミが起きるようでしたら、お尻をポンポン叩いてください。私、チョット父の様子見てきますから」女は俺の返事を待たずに、さっさと部屋を出て行った。

 ……父の様子を見てくる?親父が同居している。様子を見てくると云うからには体調が悪くて寝ている。場合によると介護が必要ということか……

 ……ところで、この部屋は禁煙だろうな?灰皿も見当たらない。ジュースの空き缶を灰皿が使えるのだが、子供の寝ている横で吸うのも気が引ける。しかし手持無沙汰だ……

 俺は初めての家で許されるかどうか別にして、キッチンの換気扇の下に首を突っ込み喫煙を企てた。

 旨い、出来たら椅子に座って吸いたい気分だが、それはマナー違反だろう、否、換気扇の下でも、充分にマナーには違反していた。

 出された麦茶もあらかた飲み干したのに、女が戻ってくる気配はなかった。

 ……嫌に長いな、子供が起きそうもないのがせめての救いだが、親の具合を見てくるだけにしては遅過ぎる。特に咎める気はないけど、この手持ち無沙汰な時間は……

 俺は女が戻ってこないのをいい事に、二本目の煙草に火をつけた。整理整頓された台所とは言えないまでも、一定の炊事をしているにしては、掃除は行き届いていた。

 普通、突然来訪者があった場合、そそくさと、そこいら中の物を押し入れにでも突っ込みたくなるものだが、ありのままの日常があった。

  「すみません!ちょっと買物までしてきたものですから」女が息せき切ってリビングに飛び込んできた。
 つづく

お知らせ:明日帰宅後、今までの「結衣との関係」第1章をまとめてアップしておくので、少しは読みやすくなると思います。
では、おやすみなさい。 かりん


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終着駅30 性格は愛人向きではなかった


第30章

副社長の竹村とは、それから2年近くつきあったが、私の性格は愛人向きではなかった。

 セックスは良かったが、価値があったのはそれだけで、それ以上のものを私は得られなかった。特別別れる理由はなかったが、竹村が外資からの誘いで会社を辞める際に、私にも来て欲しいと言われたのを、最終的に断ったことが、転機になり、自然消滅のように竹村は消えていった。

でも、バギナとペニスの結合で、初めて快感を与えてくれた竹村には、口には出せない感謝の気持ちはあったので、それなりにつき合った価値はあったのだと、後になって気づいた。

その後、どういう訳か、私が主任に抜擢されたのは、竹村が円満転職してから1か月後のことなので、竹村の置き土産だとは知らなかったが、竹村が創業社長の浮田に、一緒に転職を誘ったが断られた私は役に立つ、と言いおいていったという話を、創業50年パーティーの席上で耳打ちされた。

今頃になって気づいたのだけど、その当時、社長室には3人の秘書がいた。その一人が、映子だった記憶が蘇ったのだが、そのことと、厭味な手紙の主が、映子だと云うことと、直接には結びつかなかった。

ただ、どうして映子は秘書室から出されたのだろうか。同じ平社員ではあるのだが、今の境遇と秘書室在籍は、男子社員の目から見ると段違いの扱いなのに…。

おそらく映子本人は、何らかの事情を知ったうえで、異動を受け入れたのだろうか、それなりの理由はあったのだろう。

その辺まで映子のことを考えたが、それ以上考える気にはならなかった。もう考えるのはやめて帰ろう、と私はその小さな店を後にした。


注:≪ 「なるほどね、そういう事って小説とかテレビの世界の話だと思っていたけど、現実にあるのね」私と有紀は、それほどシビアな問題を話し合う雰囲気もなく、お互いにフィレミニオンなどを摘まむように食べながら、ワイングラスを傾けていた。 ≫と妹、有紀との話(第31章)に続きますが、ここでブレークタイムです。「結衣との関係」の連載を暫しお送りします。

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終着駅29-2 誰も寝ていないベッドが…


 第29章-2

 五十歳になったばかりの副社長、竹村主税は、わが社にとってエリート中のエリートだったが、男としての魅力も豊富に備え、少しだけセクシーな中年男性だった。

 プロジェクトの難題を、幾つもの解決策をサジェスチョンする時の独創性は、全員が小澤征爾の指の動きに合わせて楽器を奏でる魔術に掛かったように、同調的に動いた。

 酒豪だったが、乱れることはなかった。時折、一緒に次の目的地まで急ぎ足で歩いているにもかかわらず、甘味やを目ざとく見つけ、“チョッと食べていこう”と無邪気な顔で“みつ豆”を貪る姿は、子供っぽく、そしてセクシーだった。

 当時の私は、24時間竹村の魔術から抜け出すことなく暮らしていた。そんな私が、竹村に抱かれるのは自然の成り行きだった。特に、竹村と寝ることが出世に結びつくことは考えていなかった。単に、セクシーな中年男が、どんなセックスをするのかという好奇心に誘われた感じだった。

 そんな或る晩に、プロジェクトの有力クライアントで、好感触を得ているS社の接待を終えて、ホテルのバーで一息ついていた。

 そのバーは珍しく、深夜お腹の空いた客用のミニステーキを出すバーとしても好評だった。二人は黙々とステーキでお腹を満たし、一仕事終わらせた安堵感を共有していた。

 二人は、アルコール類を口にする気はなかった。お互いにジンジャーエールを注文し、無言だったが共通の感慨を持つ同志のような雰囲気で、カウンター内できびきび働くベテラン・バーテンダー指先を追っていた。

 「滝沢君もよく頑張ってくれたね。感謝しているよ」副社長が、ぽつりと口をきいた。

 「無」のような時間の中で、ぼっとしていた私は、その言葉に、どのように反応していいのか判らず、無反応だったかもしれない。少し、恥じらいの表情を見せていたのかもしれない。或いは、科(しな)をつくっているように竹村には見えたのかもしれなかった。

 「今回のプロジェクトも目途がついた。どうも、僕は見通しがはっきりしてしまうと、エネルギーが萎んでいく男なんだよね」副社長は、特に私に話すと云う感じではなく、独り言のように呟いた。

 「何て言うのかな、肩の荷が降りた途端に、気力が半減してしまう。いまだに、この性格は変わらんね。母親から、手厳しく言われ続けて、50年だよ」

 私は、つい“プッ!”と吹き出した。

 「あぁすみません。だって副社長が、子供のような愚痴をこぼすなんて、何だか可愛い感じがしちゃって」

 「案外、男ってのは、無邪気なものだよ。仕事だって、一種オモチャのように扱う習性があるから、夢中になれるわけだよ。オモチャだから、必ず、或る段階で飽きる、そう云うものなんだな」

 「そうなんですか。だったら、副社長は、今回のプロジェクトにも飽きがきている?そういうことですか」

 「そだなぁ、滝沢君に向かって、こういう言い方は不謹慎だけど、幾分その傾向はあるかもしれない。俺自身は、会社のためとか、そういう感じで仕事をしたことはないからね。あくまで、仕事の請負人のような心境でしか、仕事はしていない。だから、この仕事の次は、どんな仕事が注文されるのか、その注文を待つ心境に幾分傾いている…」

 竹村の目が遠くをみつめていた。私は、ロマンを追いかける男の姿を目撃している気分だった。そして、この男の腕に抱かれてみたい衝動を憶えた。

 竹村ほどの世慣れた男にとって、私の心の動きは、完全ではないにしても、かなり読み取ることは可能なのだろう。

 「今夜はすっかり疲れてしまった。僕は、部屋をとって、今夜はここに泊まるよ」竹村は遠回しに、私を誘惑してきているのだと思って身構えた。

 「滝沢君はどうする?帰るなら、玄関まで送るし、泊まるのなら、部屋を取ってあげるけど…」

 誰も寝ていないベッドが、Tホテルのシングルルームにあった。その部屋の宿泊客は、違う部屋のツインルームの宿泊客になっていた。

 そして、出社に間に合うように、朝方、シャワーを浴びるだけの贅沢な宿泊客は、何事もなかったように、徒歩で会社に向かった。

つづく

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終着駅29-1 


 第29章-1

 これといったメールは入っていなかった。明日になれば判ることだけど、有紀が美絵さんから告白された話をでっち上げる理由はなかった。

 何らかの状況で、美絵さんが、圭の行動に不信を持った可能性は、ゼロとは言い切れなかった。圭は、美絵と云う女性を見くびっている。彼女はそれ程馬鹿な女ではない。意外に取扱いが厄介な女なのかもしれない、と私は思った。

 母に、圭の件で電話をしてきたのも、幾分突飛だったし、私に連絡を入れてきたのも、突飛と言えば突飛だ。あの時は、圭に首ったけの婚約者と云う評価でディスカウントしたのだけれど、杞憂と想像力の亡者のような女であることも、考慮に入れておかなければならないと思った。

 仮に、圭が何らかの不注意をしたとして、その不注意の推理の行き先が、私にたどり着くのも突飛な想像だった。たしかに、その想像はピッタリ当たっているのだけど、美絵の想像力が、それ程たしかと云うのは考え過ぎだろう。

 おそらく、圭の周辺を嗅ぎまわっても、出没する女が、私や母や有紀だけに辿りつくのだろう。つまり、圭が私以外とは、変な関係がないと云う事だけは理解できた。しかし、そんなことが知りたいわけではない。

 ただ、何かにつけて、圭が私の名前を持ちだす可能性はありうる。その何気ない言葉が美絵の勘どころに強烈な刺激を与えていることは、想定できた。

 子供のころからの習慣が、美絵と結婚したことで、消え去ると考える方が安易なのだろう。私は、そこまで考えて、そのような想定で、この問題への対応を考えなければと思った。

 事実関係は、時には違うかもしれないが、当面そう思うことで、不安定な状況からは脱した。

 私はそのような自分の危機脱出法が、百発百中でないことは知っていた。そのように思いこむことで、或る平穏な時間を確保することは悪くないと思っていた。その仮説が崩れても、まったく慌てないためにも、このような精神的防衛は有効だった。

 想定問答に強いと云う評判があるのも、このような性癖が功を奏している結果であり、三十歳になる前に主任に抜擢された理由の一つだと自信を持っていた。男子社員を含めての早期主任就任は、やっかみ半分の噂も生みだした。

 しかし、その噂は一定の事実を言い当てていた。正確性には欠けていたが、一部当たっていた。現在は定年退職した高木部長の依怙贔屓で、私が主任に抜擢されたと云うものだった。

 その噂は、部長が私を贔屓にした理由は、私の女の武器に籠絡されたと云うものだった。しかし、依怙贔屓された事実は事実だが、相手は部長ではなかった。その点では、退職した高木さんには迷惑を掛けてしまったと、今でも気が引けている。

 尤も、高木さんも、役員になれるかどうかの瀬戸際で、自分を売り込むために、私を半ば利用しながら、副社長に接近していたわけで、最終的には、単に役員レースに負けただけの男に過ぎなかった。

 しかし、その売込み中に、私を副社長のプロジェクトに参加させてくれたのは高木部長だったので、その点での感謝は無碍にも出来ない。

 ただ、副社長のプロジェクトで、副社長の秘書的業務に携わった私が、副社長の毒牙に掛からない方が奇跡に近かった。
 つづく

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終着駅28 スカートの上から太腿に指が…


第28章

 課長が私を待ち受けていた。S社の役員らとの会食が急遽今夜になったので、私にも出席して欲しいという用件だった。

 気の進まない会食だったが、断れる立場でもなかった。S社の常務の滝沢と云う男が、執拗に迫ってくるのは目に見えていた。

 無論、完全に断るわけだが、断るまでの間、執拗に身体を触られるのが嫌だった。上場企業の常務といえども、一皮むけば、ただの助平な中年男に過ぎないのだが、無碍な断り方で、不興の煽りを業務上蒙るのも都合は良くなかった。

 私は、こういう事態に、時々見舞われる。その嫌らしく触られる状況を逃れる方法として、物理的手段を用意していた。一つは、硬めのガードルを穿いて、股間を防御しておく。

 次に、ブラジャーの中にシリコンの詰め物をして、触られている感触をなくしてしまう、という専守防衛に努めた。今夜もその武器の出番だった。映子と鉢合わせしないために、私は早めにロッカールームに入って、それを身につけた。

 ブラジャーの中に入れたシリコンが、一段と胸を強調していた。出来たら、シリコンじゃなく、セラミックの乳あて鎧でもあると良いのに等とバカバカしい事を考えながら、服の上から揉んでみたが、触られている感触は大分遠のいた。

 ガードルの方が断然硬さを感じる。これでは、股間に手を挿し込んでも、その指先は無機質な何かを感じるだけに違いない。出来ることなら、手術用のゴム製の手袋もして行きたいところだが、手だけは治外法権にするしか方法はなさそうだった。

 案の定、S社の常務はグラスのピッチを上げ、早々に酔ったフリをして私の隣の席に陣取った。そして、この案件が継続できるのは、専ら我々勢力の推進のお陰であり、アナタ方は感謝すべきだ、みたいな話をしながら、さり気なく膝のあたりに手を伸ばしてきた。

 柔い生地のスカートは、足を触られる限り、防御の手段は殆どなかった。私は、腿用のガードルがない事を怨んだが、太腿も手と同じだと、上の空を装い、常務の好き勝手にさせていた。最後の砦は守られている、そのことだけに意識を集中した。

 そして、腿のつけ根からデルタ地帯に手が伸びたとき、その指先には“ガッカリ”と云う動きが歴然と表れた。常務の顔にも、“なんだガードルじゃねえか!”と云う怒りのような、怒りを抑え込もうとするような、複雑な表情が現れていた。

 一次会は二時間ほどで済んだが、後半の40分間近くは、スケベ常務の魔の手との闘争だった。その間に、二度も頬に、臭い息を吐く唇でキスをされたのは不覚だった。

 この次は、特別に厚手のファンデーションを塗りたくってやろうと思った。前もって、二次会には行かないと課長に断ってあったで、挨拶もそこそこに、会場の料理屋を抜け出した。

 そのまま帰る気分でもない私は、新橋の雑踏の中で一番明るく見えるケーキ屋さんに入った。

 “十時閉店ですけど、よろしいですか?”

 健康そうな赤ら顔のウェイトレスが声をかけてきた。思わず、時計を見ると九時をかなり回っていたが、構いませんと答え、モンブランと紅茶を注文した。一瞬にしてモンブランがお腹に中に消えていった。


 「すみません、イチゴのショートケーキも頂けますか」私は、もう客の居なくなった店内で、大きな声で注文した。

 奥の方から、“ハーイ”と云う声が届いた。考えてみると、接待の席で、食べ物を口にした記憶がなかった。

 …クソ、あの常務野郎、復讐してやる…

 私は愚にもつかないことを思い浮かべながら、ショートケーキを味わいながら、ゆっくりと食べた。そしておもむろにスマホをバックから出して、メールを確認した。
 つづく

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終着駅27 身体は相当に目覚めて来ている…


第27章

……いずれにしても、圭に確認するのが一番だ。まさか、深夜の電話もメールも拙い。有紀と待ち合わせする明後日までに、状況を確認する。それしかないよね……

私はそこまで自問すると、ありがたい体質、そのまま深い眠りについていた。

『メールじゃ意味不明だから、電話して貰える』私は、圭と何度かメールのやり取りをした後、苛立つように最後通牒のようなメールを送った。

『了解!30分後に電話します』了解じゃないだろう!と思いながら、私は圭の能天気なメールを読んだ。そして、部長に、私用だと断って、ビルを飛び出し、近くの公園に急いだ。

「えっ!美絵が、姉さんとのこと知っているって?そんな馬鹿な、知るわけないよ」圭は、昨夜の有紀の話を全否定した。

「まったく心当たりがないのね」

「そう、まったくないよ。それにって言うのも変だけど、美絵は妊娠しているみたいだし…」

「えっ、もう妊娠したの?」

「うん、たぶん、2か月か3か月だと思う」

「つまり、アナタ達の関係は順調ってことよね?」

「俺も、それなりに気を使っているから、その辺の美絵の変化を見落とすことはないと思う」

「そう、でも有紀が作り話する筈もないしね」

「まあ、たしかに、それもそうだけど…」

「わかったわ。明日、有紀と会うことになっているから、さり気なく、美絵さんとの話の内容を聞いてみるわ。圭は、いつも通りに振舞っていなさいよ」

「うん、そうするつもりだよ。だって、本当に何事もないんだから。それに、こう云うこと姉さんに話すのは変だけど、美絵の身体は、相当に目覚めて来ているくらいだから…」一瞬、愉快ではない気分が襲ったが、それが筋違いなことくらい、私は理解していた。

「そう、それは良かった。私だけ好い思いするのは心苦しいから、良いことだわ」

「それもこれも、涼ねえさんの薫陶の賜物だから、感謝してるよ。美絵だって、本来なら、姉さんにお礼を言うべきなんだから」

「それはないでしょう。間違っても、そんなこと言っちゃ駄目だよ」

「わかっているよ。そこまで俺、バカじゃないよ」圭が漸く笑った。そして、私も吸い込まれるように笑い、明日、有紀との話によっては、その事情をメールで知らせるから、夜はマナーモードにしておくように伝えた。

……どういうことなのだろう?美絵さんは、女の勘のようなもので、有紀に話をしたのだろうか?そんな不用意なことをする人なのだろうか?いや、考えてみると、圭に他に女がいるんじゃないかと疑ったとき、まずは、母さんに尋ねると云う不用意さがあった。……

……次に、私に尋ねてきたのだ。美絵と云う人には、杞憂のようなものを、誰かに投げつけて、自分だけ、心の平穏を求める性癖があるのかもしれない。そう、きっと、あの時の疑惑を解決してくれた私が、実は犯人だと、疑い出したのかもしれない。……

……そして、幾分事実を歪曲して、有紀に事実のように語り、有紀を悩ませ、そしていま、私を悩ませている。……

……そうなんだ、美絵さんと云う人は、幾分精神的厄介な人なのかもしれない。後ろ向きの”変”なのだから、圭に危害は及ばないだろうけど、何を言いふらすか判らない、危険な性癖の持ち主かもしれない……

私は、当座のいい加減な解釈をくわえて、社に戻った。
つづく

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終着駅26-2


第26章-2

「圭には話したの?」

「話していないわ。姉さんと圭の関係だから、ねえさんに話せば、圭にも通じるだろうけど、それはどっちでも良いの」

有紀がさりげなく言い放った言葉に、私は戸惑った。

“姉さんと圭の関係だから”このフレーズの指し示している意味はどこまでの関係をさしているのだろう。

親分子分の姉弟の関係なのか、それとも、もっと親密な関係にまで言及しているのか、私は戸惑った。

半分目を閉じていたので、表情を読み取られる不安はなかったが、「その関係って、どういう意味?」と尋ねる勇気も、もちろんなかった。

「なんだか、私半分寝ていたから、有紀の話って、もう一度チャンと聞かせて貰わないとね。そんなホモな男との見せかけの夫婦を演じるために、有紀が人身御供になるって話を、ああそうなのって聞いてはいられないわよ。明日とか明後日とか、出来るだけ早く、チャンと話を聞かせてよ」

「チャンとって言っても、それだけなんだけどね」

「違うよ。とめるとか、そういうことじゃないけど、それで問題や反省が後々起きないのか、少し考える時間は必要よ。劇団命は知っているけど、そのことによるリスクと云うか、悲劇のようなもの、事前に考えておいた方が絶対にいいよ。そういう意味よ」

「まあね。何となくの不安はあるんだけど、それがどんな不安なのか、自分では整理がつかないしね。姉さんに考えて貰えれば助かるわ」

「夏休みの宿題を手伝うのとはわけが違うけど、たまには、有紀の手伝いするのも悪くはないからね」私は、そうして、当面の危機を逃れた。

しかし、その逃避は、次の瞬間に打ち砕かれた。有紀は、明後日の土曜に近所のファミレスで会う約束をして部屋から出ていく寸前に、衝撃的情報を言葉にした。

「あのさ、美絵さんがね、圭と姉さんのこと疑っているみたいなんだよね。だから、そのことも話さないとね。じゃあ、おやすみなさい」有紀が手りゅう弾を投げつけて、その扉を固く閉じた。

……有紀が私と圭の関係を知っている?いやいや、美絵さんが、私と圭の関係を知っている……

……どういうことなの?美絵と有紀が、私と圭、二人の関係を知っていて、何事もないように平穏にことが進行しているわけ?それを知ったうえで、美絵さんは、圭と結婚したわけ?そんな馬鹿なことはあり得ない。想像妊娠のように、思い込みと推理の行き着く先が、そういう疑惑になったに違いない。それを、自分の胸にしまい込むことの出来なかった美絵さんが、私や母さんには言えないので、有紀に言ったという推測は成り立つ。不自然だけど、そういうことはゼロではない。それにしても……
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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