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先日の旅籠で あぶない女58


第58章

寿美は間髪を入れず応答した。さも、誰かの電話を待っていたのではないかと思うほど早かった。

まさか、俺からの電話が来ることを待っていたわけではないのだろうが、機嫌のいい声音だった。

先日の1万円を返したい旨を伝えると、あっさり、先日の旅籠で会いましょうと提案してきた。

寿美を誘う算段を色々想定していたが、あっさりと寿美によって打ち砕かれた。2戦2敗した気分で電話を切った。

どこか吸いとり紙のような寿美と云う女に怖れを感じたが、逃げ出す気はなかった。いずれの日にか、寿美を屈服させる情景を描いてみたが、具体的な映像は浮かんでこなかった。

寿美が魔性の女であるかどうか、今日たしかめられるとは思わなかったが、少なくとも、男女の関係にはなれそうな気がした。

何故と聞かれても、斯く斯く然々という理由はない。ただ、二度目の逢瀬を迎えて、男と女にならなかった事がないからと云う、経験則によるものだった。

敦美の身に何かが起きたことは気になったが、警察からの電話で動いた状況から推測する限り、敦美の身が危険にさらされている状況ではないのだと思っていた。

いま、敦美の為に出来ることは、彼女の携帯を持ち歩き、連絡を待つことくらいだった。そして、その通りにすることで、免罪符は得られた。

今日中に連絡が入るだろうが、寿美と情交中に鳴らないことを祈るのみだった。

案の定、寿美は風呂を浴び、涼しげな顔でビールグラスに口をつけていた。

目は妖艶だったが、敢えて合せないようにして、残ったグラスのビールを飲み干した。

「汗を流していらっしゃったら」

寿美は、浴衣とタオルセットを俺に手渡し、今日は布団の中で、俺の身体をたしかめるとでも言いたそうに促した。

「結構暑くなってきたね。少し歩くと汗ばんでくるからね」俺は素直に、手渡されたものを受け取ると、例の総ヒノキの浴室に向かった。

 つづく

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亡くなられた片山亮介さんは あぶない女57


第57章

敦美からの連絡を待って、俺はベッドに寝ころんでテレビを見ていた。特に観たいものがあったわけではないが、ニュースのワイドショウにチャンネルを合わせていた。

「………亡くなられた片山亮介さん(38歳)は昨日午後から夜にかけて、自宅マンションの一室で死亡していました。現場の状況から、殺害されたものとみて新宿南署は捜査開始しました。金品などを物色した跡がないことから、片山さんが何らかのトラブルに巻き込まれた可能性を視野に捜査する模様と関係者は語っています。次のニュースは上野のパンダのお話です………」

一字一句覚えたわけではないが、新宿で男が殺されたと云うニュースだった。

敦美と関係あると云う確信はなかったが、なぜか、片山亮介と云う男が、敦美の旦那のような予感があった。

家に戻れば、詳しく確認する方法もあるのだが、ホテルの部屋では、敦美からの連絡を待つ以外、為すすべがなかった。

知ったかぶりしたコメンテータが、A首相の心の中を覗いてきたような詳しい解説を加えていた。

しかし、これだけ理路整然風に、妄想を話せるのは、一種の才能であり、一歩間違えれば詐欺師のように思えた。

そうか……、また気づいた。

敦美が、俺の番号を記憶していない限り、俺の携帯に電話を掛けることは不可能だった。おそらく、番号は覚えていないだろう。

ということは、ホテルに電話をしてくる確率が最も高かった。しかし、いつ連絡をしてくるかわからない。してこないこともある電話を待つ気にもなれなかった。

敦美がどれほど間が抜けていても、自分の携帯番号なら覚えているに違いなかった。そう、まさに、その敦美の携帯電話は、俺の手の中だった。

気がついてみると、あまりにも当然のことなのだが、非日常な状況に遭遇すると、人間はうっかり事実関係を見逃すようだ。特別、俺が間抜けなわけではない、そう思うことで、俺は次の行動に出た。

先ほどのニュースと、敦美がいなくなったことに関連があるか、何ひとつ手掛かりはなかったが、新宿在住の片山亮介38歳が敦美の旦那である可能性はかなりの確率だった。

敦美が突然、不自然に姿を消した状況と重ね合わせると、事情聴取、或いは参考人として任意の取り調べを受けている可能性があった。遺体の確認と云うこともあった。

いずれにしても、敦美が自分の携帯に電話を入れることに気づくまでには、相当時間がかかりそうだった。

ダブルのホテルの部屋で、何時ともわからない敦美からの電話を待つのは苦痛だった。

Oホテルを出た俺は、家に帰る気にもなれなかった。不動産屋との約束もキャンセルしたことで、半日の時間が空白になっていた。

こういう空白の時間等と云うものを手に入れたのは神の恵みかもしれないと思いながら、シャネルスーツの女のことを考えていた。

敦美が窮地に立たされているかもしれないにも関わらず、俺は他の女のことを考えていた。

時計の針は12時を過ぎていた。新井寿美にとって、最も暇な時間に違いなかった。

寝起きが悪く、不快な声が返ってきたら、名乗らずに電話を切る積りで、メモにあった携帯の電話を鳴らした。

つづく

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次の一手 あぶない女 56


第56章

次の一手に気づくのに、俺は1時間を要した。

なんとまあ気がつかない男だと自分を罵りながら、敦美の携帯を手にした。

他人の携帯電話を手にすることは、経験がなかった。奇妙に後ろめたい心持ちだった。

しかし、事情は差し迫っていた。

敦美に、何かが起きたと思える状況なのだから、彼女の携帯を見ることは、関係者として当然のことだった。見ないことの方が、不作為を責められる状況だった。

メールの着信履歴は、俺の着信が最後のものだった。警察ドラマ風に考えると、最も怪しまれる人間は、俺だという方向を示していた。

“電話だ、電話だ”俺は、そんなことを口にしながら、電話の着信履歴を確認した。

“033920*110”これが、最終着信番号だった。

新宿管内の警察だ……。

リダイヤルすることも考えたが、曖昧な立場の俺が、不用意にリダイヤルする行為は、墓穴を掘る結果を招きかねない気がした。

墓穴?

どうして、墓穴だと思うのか。そう、墓穴と云う考えが浮かぶということは、敦美の身に何かが起きたという前提があると云うことだった。

しかし、敦美の携帯に、警察から電話が来たということは、少なくとも拉致監禁などの事件に、敦美が巻き込まれたわけではない、そのことが、俺に冷静さをもたらした。

何らかの容疑で、敦美を身柄拘束する為に、警察が電話を鳴らしたと考えるのも変だった。

最も考え得ることは、警察が、何らかの事件で、敦美に連絡する必要が生まれたから、そう考えるのが自然だった。

敦美の関係者?当然、一番の関係者は、俺ではなく、彼女の亭主だった。

敦美を覚醒剤中毒者にさせようと試みていた旦那が、彼女の最大の関係者だった。

つまり、敦美の亭主が、犯罪の被害者か加害者になった、そのどちらかで、敦美に電話が入ったと考えるべきだった。いや、単なる交通事故とか、救急車を呼んだなどの可能性もあった。

敦美の携帯が残されていて、最後の着信が警察からだった事から、多くの想像が成り立ったが、だからといって、俺の打つ手は限られていた。

ひとつは、その警察署にダイアルして、携帯の持ち主である敦美に、何が起きたのか聞いてみると云う手だった。

この場合、俺自身が表面化する覚悟が必要だった。それこそ、“あなたは敦美さんの何なのよ?”と問い質されることを覚悟しなければならない。

いや、敦美さんと云う呼称は不適切で、***さんの携帯ですが、どのような要件だったのでしょうか、と聞かなければならないのだが、まだ俺は敦美の苗字を知らない状況だったのだ。

苗字を知らない男が、女の携帯を手にして、何か女の身に起きたのでしょうかと警察に聞くことは、ひどく間抜けに思えた。

携帯の住所録を確認すれば、敦美の苗字は、おそらく判るだろう。ホテルのフロントに確認する手もないわけではなかった。

しかし、俺のすべてのセンサーが、疑われるような行動には出るべきではない。敦美のアドレス帳を覗く行為も、礼儀として怪しい線だった。

不作為だが、このまま敦美からの連絡が来るのを待つという最も消極的な方法が賢明だった。

つづく

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敦美の姿はなかった あぶない女55


第55章

「12万、それって相場よりも高いのかな?」

「そう、高くも安くもないってことか……、だったら、明日にでも見に行きたいけど、そちらの都合は……」

「そう、それは良かった。それで、敷金とか礼金とかは?」

「へえ、敷金が1か月で、礼金は無しか……、今どきは、そういう傾向があるのか……。いずれにしても、それで条件的には問題ないよ……。そうだね、保証協会で処理した書類を作成して貰えば良いよ。金で迷惑をかけるような人じゃないから……」

早速、敦美が泊まっているOホテルに電話を入れた。

“えっ、中井駅……。新宿に近すぎないかな?”

「近すぎるけど、君のフィールドかと思ってさ……」

“たしかに、慣れ親しんだ街だけど……”

「昔の男でも住んでいるのか?」

“違うよ、直感的に、近すぎるって思っただけ。でも、考えたら、迷わずに暮らせるわけだから、悪くはないのかな……。そうだね、伊勢丹に行く時もタクシーで直ぐだし……。そこにするよ”

不動産屋と約束した時間は午後二時だった。一時にホテルに迎えに行くと伝えると、十時に来てほしいと、敦美は強く主張、いや、哀願した。

その余裕の三時間で、どのような行為が繰り広げられるのか、想像に難くはなかったが、この際、敦美の心と身体へのケアは必要なのだろうと、快く応じた。

約束通り、俺は十時にOホテルの***号室のドアをノックした。

しかし、欲情した女の声は返ってこなかった。ドアにドアカードをかざし、部屋に入ったが、敦美の姿はなかった。

バスルームにも、トイレにも、敦美の姿はなかった。

俺の敦美と云う女に関して描いていたストーリーが、根こそぎ葬り去られた。そんな気分で、無人のデラックス・ダブルの部屋を呆然と眺めていた。

敦美が、突然ホテルの部屋から外に出る可能性は、俺の知る限りゼロだった。旦那が、Oホテルに敦美が宿泊している情報を得て、拉致したのだろうか。

しかし、拉致などの行為が実行されたような形跡はなく、ベッドメークを済ませた二つの真っ白な枕は、主を失い寂しげだった。

メモのようなものが残されていないか、部屋中探してみたが、メッセージ性のあるものは見つからなかった。

さて、どうしたものか……。

俺が敦美を探す思いつく手がかりは、携帯だった。

そうだ、携帯を鳴らせば、敦美が部屋にいない理由は即座に知ることが出来ると云うことだった。

意外に、人間はいざとなると、あまりにも単純なことに気づかないものだと苦笑いしながら、敦美の携帯を鳴らした。

俺の携帯がハウリングしていた。いや、ハウリングではなかった、ベッドの下から、その音は聞こえていた。

……敦美が携帯を忘れていった……?考えにくいことだった。

間違って落としていったか、慌てて出ていく事情があったのか、いや、やっぱり強引に連れ出されたのだろうか……、俺には、打つ手はまったく与えられていなかった。

無為な待ち状態だが、取りあえず不動産屋に、今日の約束をキャンセルする電話するのが精々だった。顔見知りの不動産屋は、今日一日は返事待ちの物件にしておくと云う話だった。

それにしても、敦美が携帯を置いていっていった以上、こちらから連絡する方法はなかった。唯一、このOホテルの部屋で、敦美からの連絡を待つ以外、方法はなかった。

つづく

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女房に毒を盛る亭主 あぶない女 54


第54章

敦美に、こんな町に住みたいと言った希望はなかった。

生まれも育ちも新宿なのだから、他の町がどのような住み心地か知る由もなかった。彼女の目的は、自分の女房に毒を盛る亭主から逃げ出す緊急避難、当面の安全が目的だった。

そういう意味で、住む部屋の環境さえ良ければ、文句を言わない筈だった。無論、追々には、住む町の環境などにも注文が出るかもしれなかった。その点は考慮しておいた方が良さそうだった。

直感に過ぎないが、中井駅か上石神井駅周辺なら、そのような不満も少ないような気がした。ファックスで送られてきた物件には、上石神井の一軒だけだったので、中井、上石神井中心の物件を追加するように、不動産屋に依頼した。

敦美の住まいのことを手配しながら、俺は違う女のことを考えていた。そう、いま最も問題なのは、敦美の部屋探しではなく、新井寿美と云う女のことだった。

屋上屋を重ねるように関係する女を積み上げていく。そのことへの根源的問題の解決は、おそらく、どこかで必要になるのだろうが、今ではない。心の病の一種なのだろう、ぼんやりと、したり顔の精神科医の顔が浮かんできた。なぜか、目に浮かぶ精神科医も女だった。自分でも、呆れるほどの執着力だった。

俺の女コレクター性癖は異常の域に達しているのだろうが、性的嗜好は、所謂、正常の範囲にある。誰も俺を異常者だとは思っていない。

女の狩人、そんな風に自分を分析することもあったが、狩人であれば、一件落着という風情で喰い散らかして去っていくものだ。ナンパ師や強姦魔は、狩人として、その場限りで関係を完結しているのだろう。しかし俺の場合は、狩りをした獲物を抱え込むのだから、どんどん荷物は重くなる。

そして、それぞれの女に、それぞれの感情を持ち合わせるのだから、頭も心もフル回転になる。財布の底が常に覗き込める状態になっている。

「病気だな……」俺は呟きながら、電話機から、十枚近い紙が吐き出す映像を目にしていた。

吐き出された物件案内の紙を拾い上げながら考えていた。あのシャネルスーツの女に連絡するのは、何時がいいのだろうかと。

女が置いていった一万円札が、女と俺を繋ぐ重要なファクターだった。一枚の札があるお陰で、俺はいつでも女に連絡を取る必要性を持つことが出来た。

それが、計算された一万円札であるのかどうか、その辺ははっきりしなかった。あのまま、俺が寝込んでしまえば、あの一万円札は追加料金で消えていたのだから、俺が女に連絡することが出来るキッカケではなくなっていた。

いや、女が置いていった一万円で追加料金を支払い、ぬけぬけとしていられる筈もない。やはり、あの一万円には、シャネル女の強いメッセージ性が存在したと考えるべきだった。

しかし、と思った。

あの女が、そこまでする理由があるのだろうか。いくら自惚れの強い俺でも、今さら女に買われるほどの魅力があるとも思えない。ご立派な一物を所持していたから云々と云う解釈も馬鹿げていた。

まぁ、このような場合、多くはこちらの考え過ぎで、相手側は何も深く考えずに行ったこと、そういうことが多かった。

課題を与えられたという自意識がもたらす一種の自惚れで、どうでも良い理由とか、理由すらないことが多いものだった。

寿美に対して、シャネルスーツの女と云う俺のイメージ作りが、強く作用しただけで、彼女取った行動は、極めて日常的行為だったのかもしれなかった。

しかし、些細なことに、魂を押しつけることは、考える側にとっての、一種ゲームであり、気持の旅にもなっていた。

俺の自意識は、何時もそうだ。些細なことに意味づけをして、ことを、殊更に大きな問題にしてしまう性癖のようなものがあった。しかし、その時間を無駄にするような心の動きが、時の経過と伴に相手側の情感に強く作用し、遂には相手側の心を動かすこともあった。

電話機から吐き出されたファックス用紙の中から、中井駅徒歩5分、1DKの物件を片手に、不動産屋に電話を入れた。

つづく

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昼下がり、行きずりの男と女 あぶない女 53


第53章

昼下がり、行きずりの男と女が高級連れ込み宿の門をくぐり、一緒に風呂に入り、その檜風呂の中で、半ば強制的なかたちでフェラチオを受け、尚且つ射精したと云う事実から推測する限り、連絡をすると云うことは、概ね男女の関係になることを、強く暗示していた。

しかし、と思った。

敦美は根拠のある関係だが、新井寿美と云う女との関係は根拠薄弱だった。いや、殆ど男女の関係になる根拠はなかった。掴みどころのない男女関係ほど不安定なものはなかった。不安定なだけなら良いのだが、不安定の上で、関係を継続する場合、その相手の心を掴む努力を強いられる。これが、想像以上に難しい。

あのアンバランスな生活環境を持つ、寿美と云う女の気持ちを繋ぎとめる器量が俺に備わっているか、かなり疑問だった。徒労を金と時間で買いに行くような気もした。

仮に、俺程度の器量で満足する女であれば、敢えて、あらためて五人目、六人目の女にする必要はなかった。ただ、まだ関係を結んでいない分だけ、女自身の実力以上に、寿美はいい女に思えた。

こうして、俺は、相手の女の良いところを見つけては、意志薄弱な心持ちのまま、意志薄弱に関係して、下駄の雪のように、女を抱え込んでしまうのだった。

いずれ、このような生活が、俺の人生に大きな衝撃を与えるのではないだろうかと予感しながらも、その生活習慣を容易に放棄する気にはなれなかった。

まぁ、そんな自責の念に捉われていたのは数分で、猛獣を追いかけるハンターのような性向が、俺の身体をあっさりと包み込んでいた。

シャネルスーツの女の家を探す必要はなかった。いまは、敦美のフリーハンドな部屋を見繕うだけなのに、色々と考えを巡らしながら、物件を眺めていた。

西武新宿線が良いのは判ったが、路線図の見当もつかなかった。記憶が正しければ、5年近い人生で、西武線に乗る機会はなかった。東武線と云う路線も乗った記憶がなかった。

リビングでは、女房とその友達数人が、茶菓子を食べながらテレビを観ていた。番組は旅番組なので、バラエティ番組の時のような馬鹿笑いはなかった。

たしか、リビングに都内の路線図が載っているパンフレットがあったのを記憶していた。本来であれば、挨拶が面倒で、客がいる時にはリビングに顔を出さない俺の顔を見て、女房が訝った。

致し方なく、ひとあたり、如才なく挨拶を交わし、用件を伝えると、リビングを引っ掻き回されたくない女房は、直ぐに探して持って行くと宣言した。

そのパンフレットが、どこにあるか記憶があるのだろう。もしかすると、そのパンフレットの近くに、大切な何かを隠し持っているのかもしれなかったが、まったく興味はなかった。

たしかに、女房は間髪を入れずにパンフレットを届けた。西武新宿線の路線図に書き込まれている駅は、半分以上、縁もゆかりもない町だった。未知の町と俺と云う関係に考えが至ると、もう一つ新たな人生が加わったようで、心が豊かになった。

下落合、沼袋、鷺ノ宮、井荻、上石神井、田無、小平……。西武新宿線の駅名を眺めてみたが、知っている町は、下落合、井荻、田無くらいのものだった。

正直、西東京方面と云うシャネルスーツの女の焼肉屋が、西武新宿線上にあるという前提なだけで、西東京という地域で考えるならば、西武池袋線にあっても不思議ではなかった。

ただ、シャネルスーツの女が、新宿から山手線に乗った事実と、新大久保で買い物をした事実を重ね合わせて、新宿発の路線を想定したに過ぎなかった。

しかし、シャネルスーツの女は、現実逃避するように新宿に出てきていると思える部分が強いのだから、俺と会う場合、新宿地域を逢瀬の場所に指定する確率は高かった。

俺の存在は、あの女にとって非現実的な存在のはずだから、焼肉屋に近くては、その存在価値を傷つけるようなものだった。

つづく


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あぶない女 52


第52章

家に向かうタクシーの中から、敦美が望む住まい探しを、知り合いの不動産屋に頼んだ。

この不動産屋に、愛人の家探しを依頼したのは三度目だ。敦美の場合、愛人と云うわけではないが、他人は愛人に違いないと思うのだろう。

相手が、どう思っているか、特別気にはならなかった。何らかの事情で、反目するような事があれば、多少のリスクにはなるが、バレタからといって、家庭騒動は起きるような家ではなかった。

金に余裕のある物件探しは気楽だった。家に辿りついた頃には、仕事部屋のFAXに、10軒近い物件の見取り図や条件概要の資料が届いていた。

家賃15万前後の1LDKは、物件そのものは少ないそうだ。おそらく、一人住まいはワンルームになるし、残りはファミリータイプになるので、その中間のニーズが少ないと云うことだろう。

送られてきた物件は、気を利かせたのだろう、俺の最寄駅から直通で行ける町が選ばれていた。それほど頻繁に行くことはない筈だが、特に文句もなかった。

果たして、頻繁に行かないと云う俺の思惑を、敦美が納得すかどうか、その自信はなかった。考えてみると、敦美に対して、旦那のもとから逃げ出せと言った手前、暫くは面倒見るのが人情と云うものだった。まぁ、他の女との時間を削れば、どうにか都合はつくだろう。

それよりも、と俺は思った。あの新大久保の女の方が気になっていた。寿美(ひさみ?)と云う女の名前から類推すると、朝鮮系の女に使われる名前だった。新井と云う苗字も半島系の人々が好んで使う苗字だった。

新大久保の女がロシア人であろうと、朝鮮人であろうと、蠱惑的であることに変りなかった。敦美には、財産と云う誘惑材料があるが、寿美には、計算できない危険な臭いもする、ポイズンな魅力が備わっていた。

住所録に加えられるであろう二人の新しい女は、出来れば同一ルートに住んでいることが理想だった。車移動であれば、同じ幹線道路沿いだと尚よかった。

つまり、西東京の端にあると云う寿美の焼肉屋と敦美の棲む隠れ屋は、同一の沿線にある方が好都合だった。
 
新井寿美と云う女は、逢瀬の場所を新大久保方面に望むかもしれなかった。そうなると、西東京と新宿の間で、敦美の住まいを探すのがベストだった。

西武新宿線沿線が有力候補だ。おそらく、西東京と言ったのだから、寿美の焼肉屋は、田無から小平の周辺にあるのだろう。ということは、敦美の部屋が西武新宿線沿いで探せば良いことになる。

取らぬ狸の皮算用かとも思うが、決して当てずっぽうなに思いを巡らしているわけではなかった。

昼下がり、行きずりの男と女が高級連れ込み宿に入り、一緒に風呂に入り、その檜風呂の中で、半ば強制的なかたちでフェラチオを受け、尚且つ射精したと云う事実から推測する限り、連絡をすると云うことは、概ね男女の関係になることを、強く暗示していた。

しかしと思った。敦美は根拠のある関係だが、新井寿美と云う女との関係は根拠は薄弱だった。いや、殆ど男女の関係になる根拠はなかった。掴みどころのない男女関係ほど不安定なものはなかった。不安定なだけなら良いのだが、関係を継続する場合、その相手の心を掴む努力を強いられる。これが、想像以上に難しい。

あのアンバランスな生活環境を持つ、寿美と云う女の気持ちを繋ぎとめる器量が俺に備わっているか、かなり疑問だった。仮に、俺程度の器量で満足する女であれば、敢えて、あらためて五人目、六人目の女にする必要はなかった。
ただ、まだ関係を結んでいない分だけ、実力以上に、寿美はいい女に思えた。

こうして、俺は、相手の女の良いところを見つけては、意志薄弱な心持ちのまま、意志薄弱に関係して、下駄の雪のように、女を抱え込んでしまうのだった。

いずれ、このような生活が、俺の人生に大きな衝撃を与えるのではないだろうかと予感しながらも、その生活習慣を容易に放棄する気にはなれなかった。

つづく

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あぶない女 51


第51章

二度目の勃起は疲れを忘れたように縦横に動いた。敦美に潮吹きによるオーガズム以上のオーガズムを与えたい一心で、俺は、敦美の中に居座った。

しかし、そのすべてが俺の思い込みだった。

屹立状態のペニスに、あらゆる努力を命じたが、敦美に潮吹きの時に見せた恍惚の顔をさせることは出来なかった。

達成感のない行為に疲れ果て、俺は身体も心もベッドの上に投げ捨てた。

「怒ったの?」

「まさか。単に疲れたから、今日は、もう良いかな、そういう感じ……」

「私のこと嫌にならないでね」

「大丈夫だよ。でも、君が考えるほど俺は若くないから、こっちの方はお手柔らかにね」

「そうなの。一回目だって良かったし、二回目のアレなんて鉄棒みたいになってたわ」

「それとこれとは違うんだよね。良く判らないけど、アレは勝手に勃ってしまうシロモノだからさ。俺の体力と無関係な動きをするんだよね」

「へえ、困った生き物ね」

「そう、若い頃は、自己制御出来たんだけどね、俺くらいの歳になると、持ち主の言うことを聞かなくなる。必要な時に勃たなかったり、不必要な時に勃ッたりするからね」

「でも、今日は元気だったわ。今日って、不必要な日じゃないよね」

「今日は必要な日に、ちゃんと勃ったね。二度目は強制的だったけどさ」

「私ってさ、あの時の表情を上手く表現できないの。だから、気持ちが良いのに、気持ちが良くないみたいに誤解されて、何度か失恋したことがあるの。随分、セックス沢山したけど、自己表現が下手なのよね……」

俺は、敦美の話を聞きながら、初めて会った時の、敦美の嬌態はなかった事になるのかと訝った。

いや、あの時の自分は幻影であり、敦美の中では、あずかり知らぬ事として消化されているのだろう。敢えて聞き質すことでもなかった。

敦美は執拗に泊まって欲しいと懇願されたが、仕事の邪魔をするような女は嫌いだし、つき合いを続けることは難しくなる、と多少不機嫌を装って話すと、仕事は大切よねと、同調することで、自分の要求ははじめからなかったような顔つきになっていた。

最後には、俺が何度か電話を入れることで、手打ちになった。まあ、家出してきた敦美としては、絶大な保護者を求めているのだから、その要求にくらい応じてやるのが人の縁だった。

つづく

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あぶない女 50


第50章

敦美の開放する言葉に誘導された俺の勃起は、まさしく、敦美の中心に収まった。

不思議なこともあるものだが、俺は敦美の中に勃起を挿し込んだだけで、何をすべきか、失念していた。

意志を失ったペニス、いや充分に勃起しているペニスを、敦美の中に埋没させておきながら、どのように動いて良いものか、方向を見失っていた。

そんな迷路で戸惑っている俺のペニスを、強く撫でまわす力を感じて、たじろいだ。

敦美の膣壁が強く確かな蠕動運動繰り出し、気もそぞろに右往左往しているペニスの先に命を吹きこんだ。

「口を塞いで!」敦美の言葉は、有無を言わさぬ力強さがあった。

俺は命じられるままに唇を重ね、激しく唾液を交換した。まさに、覚醒剤感染確実な行為に引き摺り込まれている、そんな錯覚に陥りながら、それでも構わない、そんな気分にまで誘い込まれた。

魔性の女なのか、この敦美と云う女は。そんな疑念を抱いたのは瞬間で、その殆どは、魔性な女でも、覚醒剤感染であれ、今の敦美の膣が与えてくれる快感に身を任せていた。

野生の動物であれば、既に、天敵に襲われ命を失うほど惚けた状態で、女の膣内挿し込んだ勃起の快感に身を任せた。

「いつでも良いから、出して……」

敦美は、極点に達した勃起を感じたのか、膣内に射精することを許した。いや、望んだ。

男には、膣内に射精する行為に対して粗雑さがある。時と場合によると、のっぴきならない問題を抱えることになると云う自覚がありながら、まさか、そんなことにはならないに違いない、と云う奔放さがあった。

その時の俺もそうだった。この女は、性の対象ではないと感じていたのは、数十分前ではないか。それが、今では、膣内に精液を注ぎ込もうとしている。矛盾な行動と云うよりも、考えたことが、欺瞞の証明になっていた。

半ば惚けた状態で、俺はベッドに横たわり、敦美と云う女に下半身を預けていた。

ほんの少し前に、たしかに敦美の膣内に射精したはずのペニスが、敦美の口中で勃起しているのを確信していた。

俺の肉体に、こんな力が残っていたことは驚きとしか言いようがなかった。おそらく、正確に言うならば、敦美の器量が、そのような現象を惹き起こしていると言うべきだった。

いま、勃起しているペニスは、俺の勃起ではなく、敦美の勃起のようだった。

敦美に、そのような幻惑的器量が備わっているのか、俺が、勝手に、敦美に蠱惑なにょしょうの存在を作り上げたのかハッキリしなかった。不思議なことは続いた。

射精後の奇妙な屹立状態の勃起を、再び敦美の陰部に挿しいれた。

自分の精液であるにも関わらず、挿入した時点では、肉体は不快に満たされていた。

もうここまで来ると、男と云うもの、後戻りは出来ない。何とかして、心持ちの良い状況まで努力を惜しまなかった。

敦美の膣内の、俺自身の精液を、雁部を駆使して掻きだす作業に没頭した。比較的高めの雁部のお蔭で、射精後の残滓の感触は和らぎ、送出の繰り返しは、気がつくと、いつものセックスの送出運動になっていた。

つづく

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あぶない女 49


第49章

敦美は、一糸まとわぬ姿でバスルームから出てくると、窓際に佇んだ。

おいおい大丈夫かと思ったが口には出さなかった。

まだ、俺の中では、敦美と云う女はテリトリーの外にいる女だった。その所為だろう、敦美が隣接のビルの窓から、その裸身を盗み見られても、特別気持ちが動くこともなかった。

まだ、敦美と俺と云う男の関係が希薄だと云う証明ようだった。男女の関係でなくとも、親しい関係だったら、もう少し違った対応をしただろうと、醒めた自分の気持ちに、幾分嫌悪を覚えた。

暫くすると、裸身を晒すことに飽きた敦美がベッドに潜りこんできた。

「抱いて貰える」敦美が長い脚を絡ませてきた。

いま、俺はこの女を抱きたいのか、自分の身体に答えるを求めるように、女の中心に指を伸ばした。

敦美を、潮を吹いたとき以上の恍惚に浸らせることは困難に思えた。しかし、女の中心に指を挿し込んだ挙句、何もしないというのも不自然だった。

親の遺産を手に入れたばかりに、亭主に覚せい剤漬けにされそうになった女、重大な犯罪の被害者なのだから、間違いなく気の毒な女だった。

気の毒な女と性的魅力は別物だろうが、敦美は充分に性的魅力を持ち合わせた身体の持ち主だった。

にも拘らず、敦美の身体に対して強く勃起してこない俺の身体は、何なのだろうか。

どこかで、敦美と云う女に怖れをなしているのではないだろうか。初めて会った時のシャブ中毒患者独特の症状に怖れをなしているのかもしれない。そして、敦美と合体することで、中毒が感染するような非科学的気持ちになっているのかもしれなかった。

であれば、敦美への冒涜でもある。敦美自身に関わりのない出来事で、俺は敦美と云う女を評価していることになり、はなはだ公正さにかけていた。

こんなことを考えながら、女の陰部に指を挿しいれていること自体、ひどく違反な行為をしている心持ちだった。

ルール違反を犯している俺の指は、即刻抜き去るべきだった。そして、俺はその通り、指を敦美の陰部から抜き取った。

「駄目、入れておいて。入っているだけで充分気持ちいいんだから……」

「そう。でも、その気にさせて、締めくくれないかもしれないからね……」

「それは男の人の誤解よ。セックスの締めくくりが、挿入とか射精って理解は間違っていると思うよ。胸を揉まれていても、充分性的だし、お尻を揉まれても性的だし、指を揉まれている時も、充分に性的。それだけで、行くこともあるわ。だから、元に戻して、貴方の指を……」

俺は言われるままに、指を再び、敦美の身体の中心に挿入した。そして同時に、自分の下半身が目覚めてゆくのを他人のように感じていた。

つづく

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鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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