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あぶない女 29


第29章

部屋に戻って一服していると、敦美からの連続メールが20通近く、着信していた。

敦美と云う女は、単に爆弾女だっただけではなく、ストーカー気質まで備えているようだった。

開く気にはならなかった。

一括で削除した上で、アドレスを迷惑メールに指定してしまえば、それまでのことだった。

俺は、敦美からのメールを反転させて、迷惑メールにしてしまう積りだったが、そこまでで、指はとまった。

“1,2通読んでやってから、迷惑メール指定しても良いんじゃないのか?”

そういう気持になった、特別の考えなどなかった。ただ、数通読んでやることは、最低限の礼儀かもしれないと思ったのかもしれない。

いや、このまま捨てるには惜しい女体だとスケベ根性が、指をとめさせたのかもしれなかった。

いや、実はそれだけではない。

敦美の旦那が、なぜ、自分の女房に覚せい剤入りの痩せ薬を飲ませたのか、と云う理由を考えている時、脳裏をかすめた、或る推測が引っ掛かっていた。

旦那が、いくら自分の女房に惚れているからといって、意図的“シャブ漬け”にすると云う話は、現実的ではなかった。

ヤクザの連中が、素人女をヤク中にして、売春婦として稼がせると云うのは現実的で、合理性があったが、自分の女房を逃げ出させない為に、“シャブ漬け”にするのは、合理性がなかった。

単に、女房への怨みを晴らすためとしても、手が込み過ぎている。浮気防止と考えているのなら、旦那は、ただの馬鹿だ。

現に、俺のような男を咥えこんで、さっきのような行動に出ることは容易なのだから、目的は何ひとつ達成していない。逆効果でさえあった。

そう、もっと、自分の女房を“シャブ漬け”にする、隠れた目的がある筈だった。

俺は、そのことを知りたいと思った。

少なくとも、メールのやり取りをしているだけなら、敦美の爆弾の被害者になることはないのだから。

俺は、そう結論づけて、敦美からの、1通目のメールを開いた。

つづく

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あぶない女 28


第28章

意味もなく、砲弾飛び交う戦場に行く気にはなれないが、魅力的であるなら、その地雷原をヒヤヒヤしながら歩くのも悪い趣味とは言えないだろう。

俺は、そんなことを考えながら歩き続け、職安通りを突っ切り、西武新宿駅を通過した。

西新宿の高層ビル街を歩いていた。

大久保通りのような人間臭さが排除された異空間の中を、無機質な生き物になったような気分で歩いていた。

行き交う人間がいないわけではないのだが、それらすべての人間が、ゾンビかもしれないと思えるほど無機質な動くものとして、視界は捉えていた。

再開発で整備された車道は、3車線以上を確保していたし、中分離帯も大きいので、車に優しい道路だったが、歩行者には、必要以上の負担をかける難物道路だった。

それぞれの高層建築が吹き下ろすビル風は、時に、大の男の歩みを止まらせ、準備不足の女たちのスカートを巻きあげた。

もう目の前に目印があるのに、目指す甲州街道に辿りつけず、何度か立ちどまった。

新宿駅西口に近づくと、無機質だった街の顔が一変した。歌舞伎町のような猥雑さはないが、やたらと人の営みの臭いがしてきた。

ようやく甲州街道を渡り、俺は車を駐車していた路上パーキング地帯に辿りついた。

喉がカラカラだった。出来たら、どこかで一服したい気分だったが、自販機から缶コーラを求め、自分の車の姿を遠目に見ていた。

まだ、あの敦美と云う女が、執念深く俺の姿を探し回っているような不安があった。

無論、あれから、6時間以上が経過しているのだから、徘徊している筈はないのだが、念には念を入れた。

俺の欲望を擽るだけの女体を持った敦美と云う女だったが、自発的ではないとしても、覚せい剤禁断症状が出ている女と関わりになるのは、アバンチュールの範疇を超えていた。

亭主が、どのような目的で、自分の女房をシャブ漬けにしようとしたのか、女自身が判らないのに、第三者の俺に判る筈はなかった。

ただ、持ち前の創造力を逞しくすれば、幾つかの目的を想定することが出来た。

最も有力な目的は、女を、自分なしでは生きていけない女にしようとしている場合だ。それ程に、亭主が女房に惚れている証拠だと言えるが、誰も喜ばないような証拠でもあった。

場合によると、あまりにも多情多念な女房の男関係に腹を立て、報復に出たと云うことも考えられた。

もう少し捻って考えると、女房は数年前に亡くなった資産家の一人娘で、莫大な遺産を相続していた。

その女房をシャブ漬けにしてしまえば、自らが、成年後見人(禁治産者・準禁治産者制度)になれる法の盲点をついた行為なのかもしれなかった。

いずれにしても、そのような実態を知るには、爆弾女である敦美との関係を密にしない限り、無理な推論の証明だった。

女のシャブ漬けが、単に爆弾女と亭主の愛情の変形的な行動であるなら、特別の興味はない。

しかし、後者の莫大な遺産相続絡みであれば、その経験はスリリングだ。

敦美が、成年後見制度に持ち込まれる寸前に、亭主の犯罪を暴露して、離婚手続きに持ち込む手はありそうだった。

その経緯として、俺が、敦美の成年後見人になる。現実は、表向き弁護士を立てるのが筋だろう。

特に、敦美の資産を好き勝手に費消してやれ、と云った欲望ではない。

しかし、見ず知らずだった女の莫大な財産を管理する立場になると云う企みには、それなりに魅力があった。

俺は、自分の妄想を膨らましながら、敦美の姿がないことを確認して、愛車に乗り込んだ。

つづく

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あぶない女 27


第27章

サイドテーブルの上に、灰皿を重石代わりにして、一万円札がエアコンの風に靡いていた。

一万円札は、追加料金に配慮して置いていったのだろう。

それにしても、俺の方が遥かに年長なわけで、女が、延長料金にまで配慮する必要はない筈だった。

しかし、新宿駅で、女の後姿に誘われるようについていった俺は、その時点から、女の支配下に取り込まれていたのかもしれなかった。

ルノアールでの出会いも、その後の行動も、女のなすがままだった。

俺が、自主的に何かをしたことはなかった。頭の中では、様々な思いを巡らしていたが、それが、行動に現れることはなかった。

ようするに、女が去った時点においても、俺は、シャネル女の支配下にいるのだろう。

酷く脆い、いつでも壊せる支配の壁なのだが、媚薬の匂いが漂い、エッセンシャルオイルの膜で身体が包まれているような、奇妙な心持の壁だった。

一万円札の下に、走り書きをした女の名刺が挟まっていた。

“時間が迫っていたので、声かけずに帰ります。昼間にでも、携帯に連絡入れてください。怖い女なんて思わないで、必ず連絡くださいね。新井寿美”

綺麗な字だった。シャネル女は、自ら朝鮮系の民族だとしらせていた。名前が、それを無言で知らせていた。

きっと、連絡を入れる時は、そのことも承知の上で、連絡してきて欲しいと云うメッセージなのだろう。

まだ、4時間は経っていなかったので、そそくさと着替えて、旅籠を後にした。

きっと、俺は、女に連絡するだろうから、その時、一万円を返せばいいと、財布にねじ込んだ。

しかし、と俺は思った。

西東京の外れに位置している焼肉屋がいくら繁盛しているいっても、稼ぎは知れたものと想像できた。

しかし、女の持ち物や服装、仕草など、裕福さは板についたもので、一朝一夕で身につけたものではなかった。

本人か、或いは親が、潜りで金貸しをしているとか、そう云う裏稼業をしている臭いがした。よく耳にする、北朝鮮への送金ルートの闇銀行を運営しているのかもしれなかった。

そう云う想像を働かせると、先ほどの敦美という“爆弾女”の何十倍もの破壊力のあるクラスター爆弾に近づくようなものかもしれなかった。

しかし、それでも、俺は、あの女と再会したかった。

想像のリスクを怖れている人生など、無いのに等しい。ひっそりと、健康管理に勤しむ長生きなど、御免蒙りたい。

ヤクザ者ではないが、飲む・打つ・買う、で人生充分だった。

たまたま、ヤクザと違う点は、物書きとして生業が出来ている、それだけのことだった。

間もなく、50歳になる。織田信長の幸若舞“敦盛”一節や小唄の節を真似るわけでもないが、
“人間50年 下天のうちをくらぶれば 夢幻のごとくなり 一度生を受け
滅せぬもののあるべきか”
“死のうは一定(いちじょう) しのび草はなにをしよぞ 一定かたりをこすのよ”
そんな心境だった。

人間の一生で確実に訪れるのは、誕生と死だけだ。

しかし、誕生は無自覚なものなので、パーソナルな領域ではあっても、欄外な観念だ。

自覚的に確実な人間の起承転結は“死”があるだけといっても、言い過ぎではない。

どんな人間にも約束されていることは、肉体は必ず滅びる。必ず死ぬと云う保証だけがあるのが、生命のあるものの宿命だった。

だったら、50年も生きられたのだから、残りは余生みたいなもので、今さら怖れるものなどないだろう。

つづく

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あぶない女 26


第26章

取り残された俺は、自分が放出した精液が漂う湯船で放心していた。

オスのしつこさのような精液独特の滑りが全身を覆ってゆき、最後には、肌全体に浸み込んでしまうような恐怖を感じた。

俺は、悍しい(おぞましい)湯から立ち上がった。そして、浴槽の排水キャップを引っこ抜いた。

排水機能が大きいのだろう、精液が全体に漂っていた湯が、みるみるなくなった。

檜の湯船の欠点に気づいた。

湯の上層に漂っていた筈の精液の残滓は、湯とともに流れることなく、湯船の無垢のヒノキの表面に纏わりついていた。

精液の痕跡を、綺麗さっぱり湯と共に洗い流すつもりは、あっさりと裏切られた。

何だ、流れないじゃないかと呟いて、風呂場を後に出来ないのが、俺の性格だった。

こういう客の為に置いてあるわけではないだろうが、亀の子タワシが目に入った。チャンと掃除をしてゆけと言わんばかりに、浴槽洗剤まで並べられていた。

ここまで、準備万端が整っていると云うことは、俺は、湯船を掃除する運命になっていたのだと、逆らう気もなく、亀の子タワシを手に取っていた。

精液の残滓は取り除いたようだが、亀の子タワシのパワーに感心しながら、俺の領域とは思えない部分まで磨き込んで、浴室を後にした。

既に、シャネル女は、何ごともなかったかのように、缶ビールを空にして、軽く寝息を立てていた。

俺は、缶ビールよりもコーラの方が飲みたかった。備え付けの冷蔵庫を覗いたが、コーラはペプシだった。

相当に不満があったが、ビールよりはマシだった。こういう、幸運なのか、不運なのか見分けのつかない日は、万が一にも疑われるリスクのある行為は避けておくべきだった。たまたま、酒気帯び検問をしているという事もあるのだから。

不味いと思いながら、コーラを二口呑んで、そして、煙草に火をつけた。女は、あいかわらずの姿勢で寝息を立てていた。

初めてあった男の勃起を弄び、射精までさせておいて、スヤスヤと寝息を立てる神経は相当なものだと感心した。

焼肉屋のサービスの一環に過ぎないとでも云うのだろうか。であれば、女の店は、相当に繁盛しているに違いなかった。

特に眠くはなかったが、煙草をもみ消して目を閉じてみた。

亀の子タワシの活躍は、俺に軽い疲労感をもたらしていたらしく、小一時間、そのまま寝てしまった。

日中の惰眠から覚めた時、一瞬自分が何処にいるのか、戸惑うことがある。まさに、俺は、そんな状態で目覚めた。

そして、そうだ、シャネル女と旅籠で寝ていたのだと、記憶が戻り、横に寝ていた女の姿を求めた。

しかし、既に、シャネル女の姿はなかった。

つづく

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あぶない女 25


第25章

「今起きている勃起は、俺の意志に関係なく起きているから、貴女が手で弄んでいる物体は、俺の肉体から離脱している。だから、今の俺のペニスには意志がない。俺とは無関係な一物、そういうことになるんだと思うな」

「あら、このご立派なものは、貴方のものじゃないのね?」

「あぁ、幽体離脱の遺失物だね」

「交番に届けておかないと……」

「交番についた頃には、跡形もなく溶けているかもしれないけどね」

「そう、じゃあ届けるのはやめて、拾得物として愉しむわ」

一瞬、遺失物は拾得物に変り、手を離したシャネル女は、突然立ち上がった。

なんだ、もう幽体離脱ごっこはオシマイかと、気が抜けた。

しかし、それは誤解だった。

女は、湯船の外から、幽体離脱ごっこに参加する態勢をとった。

心持ち落胆してしまった俺の幽体離脱な拾得物は、現金な態度で、息を吹き返した。

女は、酷く丁寧に、愛しさを籠めて、その拾得物を扱った。

貴重品として扱う指使いが、かえって幽体離脱した拾得物の気持ちを鼓舞しているようだった。

俺は、シャネル女の表情を見たかったが、目を開けると、当然のように、女と視線がぶつかることを想像した。

女の表情がどんなものか、その興味よりも、俺が、どんな表情に見られるか、そのことの方が重大だった。

そう、俺は、自分がいま、どのような状況にいるのか、それ自体に戸惑っていた。

つまり、自分の気持ちを見失っていたので、作るべき表情が定まっていなかった。

おそらく、そう云う男の表情は、きっと間抜けなものに違いないのだった。

女の指は、執拗に“雁部”を柔らかく嬲っていた。

酷く、繊細なタッチなので、神経を集中していないと、風が通り過ぎるような感触だった。

しかし、極度に張りつめた亀頭部は、その繊細なタッチを、僅かな漏れもなく受けとめようと、さらに、血液の流入を促進した。

神経を集中することで、勃起中枢にだけ作用する脳内麻薬が放出されている姿を想像した。

ハッキリした姿が浮かんだわけではないが、どこか善人な顔つきの働き者が、注入ポンプのレバーを汗だくになって押しているイメージがあった。

「凄い状態になるものなのね。ここまで、硬くなったオ×ンチン、見たことがないわ」

「そうだろうね、自分でも痛いくらいだから……」

「そうよね、チョッと間違って、爪でも当てたら、パンパンの風船みたいに破裂してしまいそう」

女は、そう言いながら、本気で破裂させるつもりなのか、時折、風のようなタッチの中に、爪で切り裂く行為を加え、夢中になっているようだった。

“あっ!”俺は叫んだ。

しかし、もう止められない水準に達していた射精中枢は、先兵の精液を放出していた。

俺は、その先兵の放出を悟り、恥を捨てた。

ことが、ここに至った以上、我慢の意味はなかった。

呼吸を止め、腰椎の底から噴出させる感覚で、射精の快感に身を委ね、最後の一滴まで、快感を味わい切る積りで、放出と云う行為に没頭した。

女が、俺の唸るような声を、どのような気持で耳にしていたのか、訊ねるつもりはなかった。

すべてが終わったと確認したのか、女は、あらためてシャワーを使うこともなく、浴室を静かに出ていったようだった。

つづく

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あぶない女 24


第24章

「縮んでいても、勃起係数の仮説を立てれば、だいたいの大きさは分かるわよ」

シャネル女は、何の前触れもなく、湯の中で漂う俺のペニスを摘まんだ。

「デカくなっちゃうよ」俺は、腰を引いた。

「大丈夫、たしかめるだけで、それ以上は前に進まないから」

「それだから、デカくなると、俺には不都合だよ」俺は、珍しく素直になった。

「男の人って、大きくなると、何かに入れたくなるもののようね」

「何でも良いから、入れたくなる訳ではないね。木の洞にまで入れたくはないよ」

「なら、どう云うものに入れたくなるわけ?」

「やはり、生身の洞に入れたくなるだろうね」

「正直でいいわ。貴方って、誰に対しても、こんなふうに素直に話すの?」

「そうだね。嘘をつくのは、後々面倒だから・・・・・・」

「ほら、言った通りの形状になって来てるわ」

たしかに、俺のペニスは、物理的な刺激に抗うつもりはなさそうだった。

しかし、シャネル女の洞に入れたいと云う欲望は湧かなかった。

爆弾女と別れたばかりと云う、警戒心が残っている面もあったが、このまま、女の洞を所望する浅ましさは、望むべき姿ではなかった。

物事が、単純に展開し過ぎる。

シャネル女の意図が判らなかった。

到底、男に不自由している風情は感じない。突如、性欲が沸き上がったとも思えない。

金に不自由している感じも、当然のようにないのだから、金が目的ではない。

まさか、女が俺に一目ぼれしたなどと、思える根拠はゼロなのだ。

どんな理由でも構わないが、初対面の未知の男と女が、身体を重ねるには、なんらかの根拠が欲しかった。

その根拠は、金のためであろうと、何かを探ろうとしているのだろうと、性欲を満たそうと思い立ったからにしても、根拠の前触れくらいは欲しかった。

シャネル女から、その根拠を探る何ものも見いだせないのだから、今日この場で、身体を重ねることは、ありえなかった。

「益々、洞に入れたいと、オ×ンチンが、自己主張しているけど、どうなさるの」

女の指使いは敬服に値した。

俺のペニスは完全に勃起していた。痛いほどに屹立したペニスを股間に抱えて、その気はないと言うのは、不正直にも思えた。

しかし、体と心が異なる時もある。それが、今だった。

つづく

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あぶない女 23


第23章

シャネル女は、ほどよく足が伸びる湯船の中で、俺を待ち受けていた。

どこも隠す気はなく、みごとな胸の膨らみと、くびれたウェスト、そして、漂う陰毛を見せつけた。

脚の長さが日本人離れしていたが、ハーフの顔立ちではなかった。

檜の香は、むせるくらい浴室に漂っていた。

シャネル女は、俺の視線を気にすることもなく、目を閉じ、瞑想する女になっていた。

“失礼”軽く呟いて、俺も視線を外し、シャワーを浴びた。

4時間で1万円の宿は、派手な外観のラブホテルより、数段上品で、上質感が味わえた。

「充分、ふたり入れるから、どうぞ」女は声をかけ、一人分のスペースを空けた。

本当に入って良いのだろうか、俺は瞬間的に迷ったが、動きをとめなかった。

「大丈夫よ、襲ったりしないから、ふふふ」シャネル女の腹は、俺の何倍も据わっているようだった。

「男は、損だよ。身体の変化がバレルからね」

俺は、そう言いながら、女の身体に触れないように、互い違いに、空いたスペースに身を沈めた。

下半身の存在を意識することが、かえってペニスへの血流を良くする作用があることを知っていた俺は、浴槽のお湯を掬い、顔を洗った。

「汚いわよ、こう云う処のお湯は」

女は、年上の女のような口ぶりで、忠告してきた。

たしかに、清潔と云う意味では、みだらな行為に明け暮れるホテルや宿の浴槽に、どのようなバイ菌やウィルスが潜んでいるか、判ったものではなかった。

しかし、今は、その心配以上に、心配する出来事を回避するためには、シャネルの女体から、意識を遠ざける緊急避難な行動だった。

無論、そのことを、シャネル女に説明する気はなかった。

「湯船に浸かると瞑想したくなるわよね」

「貴女は、目を閉じていたよね」

「今は開けているわよ。そして、目を閉じている貴方を見ているわよ」

「俺が目を閉じているのは、貴女の裸を見ないためだよ。瞑想なんて、とんでもない」

「あら、だったら見てよ。後姿に誘われて、ついてきちゃったんでしょう?」

「たしかに、その通りだけど、布に包まれていた時の、貴女のイメージを大切にしておきたいからね」

俺は、シャネル女の挑発に乗らなかった。

「大きなオ×ンチンの持ち主なのね」

「えっ!縮んでいる筈だけど……」

俺は、女の言葉を訝った。股間の一物は絶対に大きくはなっていない筈だった。

つづく

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あぶない女 22


第22章

「静かなバトルだったね」俺は、エアコンの効いた部屋の片隅にある、籐椅子に腰を下ろした。

「チョッと面白かったでしょう、女の鍔迫り合い」

「そう、でも、男の取り合いではなかったけどね」

「宿の主人と客の、席次争いみたいなものよね」

「流石だと関心したよ。”何年、客商売やっていると思ってんのよ、馬鹿におしでないよ”と啖呵を切った女親分のようだった」

「もう、揶揄い過ぎよ、嫌な人」女が軽く肩を打つ真似をした。

俺は、軽くいなして、逆に女の腕を取った。

女は、その勢いに任せて、倒れかかり、俺を籐椅子ごと押し倒すと、唇を重ねてきた。

どこまで進んで良いのか判らなかった。

いや、下僕である俺には、そういう意思決定の選択権はない。あくまで、選択権は、シャネル女のものだった。

権利がないということは、義務もないわけだから、経験してみると、思った以上に気楽だった。

丁度、サラリーマンが、相当に理不尽で法規範無視の労働を強いられても、一定の範囲で黙々と従う心境が理解できた。

下僕である俺は、女の状況に合わせさえすれば良い。

激しく、唇を貪るのであれば、俺も貪る。

女が、スカートを脱いだら、俺もジーンズを脱ぐ。女が苛立ちながら、ブラジャーを外すなら、俺も、シャツをかなぐり捨てれば良いだけだ。

しかし、女は、舌を挿しいれてくるようなキスをする気はないようだった。

ご主人にその気がないのに、下僕が、舌を挿しいれるのは僭越だった。

女は、押し倒していた俺の上から、あっさりと離れ、スーツの皺に手をやりながら、立ち上がると、何ごともなかったように、衣装入れになっているらしい、タンスの扉に手を掛けた。

「わたし、汗流してくるけど、ビール、お先にどうぞ」

女は、俺の返事を聞くことなく、浴衣風の上っ張りを肩に掛けると、背中を向けたまま、器用にスーツを脱ぎ去った。

シャネル女に、性的な欲求があるとは思えなかった。

あのキスにも、たいして深い意味はなく、ただの気まぐれ、そんな気がした。

迂闊に、女がその気になってると思い込み、こちらが行動したら、“なに勘違いしているの?”と強烈なパンチを見舞われるところだった。

いずれにしても、汗を流して、浴衣に着替える自由は確保されているのは確かだった。

そして、ビールを飲む自由も与えられた。特に、不平はなかった。

ただ、路上パーキングした車を数時間後には取りに行かなければならないのだから、小瓶一本くらいに控える必要はあった。

浴室の方から、声が聞こえてきた。

バスタオルでも取ってくれ、と言うのだろうと思ったが、そうではなかった。

「檜の匂いが最高よ、貴方もお入りになったら」女の声は屈託なかった。

つづく

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あぶない女 21


第21章

「まだ、お時間おありなの?」

女は、何かを思い出したように、尋ねてきた。

「大丈夫ですよ、お茶でも飲もうか」

「そうね、それよりも、寝そべって、ビールを飲んで、お喋りしたい気分なの、つき合ってくださる?」

女は、その状況がどのようなものか、まったく寸借なく口にした。

俺は、女が望んでいる状況が、どのようなものか理解するのに、数秒の“間”を必要とした。

「貴女も時間があるなら、俺の方は大丈夫ですよ」俺は、ようやく答えた。

なぜか、“僕”から、“俺”に一人称が変わっていた。

女の話し方から、性的なニオイは一切感じなかった。

俺は、それで良いと思った。

トンデモナイ爆弾女から、逃げ出してきたばかりなのだから、寝転ぶだけで充分だった。

「裏の方に行けば、ホテルがある筈だから……」女は躊躇うことなく歩を進めた。

女に主導権を握られているようだったが、このいっときが、女の唯一の自由だと思うと、下男や下僕の役を演じるのも、お洒落だった。

女は、幾つかのラブホテルを通過した。目当てのホテルがあるような歩き方だったが、余計なことを言わずに従った。

「ここが良いわ」女は歩みを止めた。

“旅荘市松”、小洒落た割烹のような小さな看板の前で立ちどまった。

その割烹風旅館は、入り口から玄関までの飛び石は“筏打ち”と云う特殊な敷石で目を愉しませた。

そして、丁寧に打ち水がされていた。

どこか“一見さんお断り”という言葉が浮かんだが、女は意に介せず、ずんずんと玄関に歩を進めた。

カラカラと台車の音が響く、市松模様のガラス引き戸を開けた。明治時代に時間が戻ったような気分だった。

「いらっしゃいませ」七十代後半と思われるうりざね顔の女が、応対に出てきた。

視線の強い女性だった。

「初めてですけど、宜しいかしら?」女も、“一見さんお断り”を想定していたらしく、丁重な物言いをした。

「えぇ大丈夫です。4時間単位で、前金一万円になっておりますけど、お宜しいかしら」

女は、客よりも物理的に上段から目線で、格上な雰囲気の話し方をした。

俺は幾分ムッとしたが、シャネルの女は意に介さずに、バーキンのバッグからおもむろに、朱色の財布を出し、一万円札と千円を女に渡した。

「一万円ですけど」

上から目線のうりざね女が、一枚の千円札の扱いに迷った。

「えぇ、わたくしの気持ち。おタバコ代ですけど、お受け取りになって」

シャネル女のささやかな反撃だったが、考えてみれば、彼女も客商売をやっているのだから、このような駆け引きは、手慣れているのかもしれなかった。

うりざね女は、口の中で“恐れいります”呟き、スリッパを出した。そして、二階の部屋に粛々という態度で、案内した。

つづく

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あぶない女 20


第20章

俺は、女の誘いに乗って、初めてのコリアン街の散策を愉しんでいた。

女の下男を演じて、買い求めた品々が乱雑に入ったビニール袋をぶら下げ、三歩後ろに従っていた。

女は、大量に買い求めた肉や野菜は、今日中に届けてよと、店員に言いつけていた。かなりの馴染客のようだった。

その購入行動から、家庭の食料品の買い出しは思いつかなかった。女が、食物屋の買い物をしているのは明らかだった。

「終わったわ。買物助手がいると、こんなに楽だとは思いもしなかったわ」

「いや、僕も初めて、この街の空気が味わえて、有意義でしたよ」

「まあ、有意義だなんて、大袈裟よ。でも、貴方は、あまりにも多くの買物をする女だと、怪しんでいるんじゃないの?」

女は、俺がぶら下げているビニール袋を半分奪い取ると、揶揄っているにしては、色っぽい目で微笑んだ。

「途中から、これは家庭の買い出しではないなと思ったよ。あまりの量だからね」

「分かるわよね。50人住んでいる家族なんているわけないもの」

「そう、精々5,6人で多い方だろうからね」

「今日買ったのは、二日分のお店の食材。なに屋さんか、察しもつくでしょう?」

「貴女からは想像しにくいけど、買ったものを見ている限り、焼肉屋さんだけどね」

「そう、私は、焼肉屋の女将さん」

「へぇ、それはお見逸れしたな。貴女と焼肉屋さんを結びつけてイメージ出来る奴はいないだろう」

「家と云うか、お店から離れた時だけが、私の時間なのね。だから、日常と違う自分を味わえる、唯一の時間なの……」

「お店は、お一人で切り盛りしているの?」

「いえ、家族総出よ。もっとも、最後まで仕事をしているのは、私だけだけどね」

「途中から、家族は抜け出してしまう。そう云うこと?」

「それなら、清々するけど、店で酔い潰れてしまうの、ふふふ、ホント酷い父と兄なの」

「店の酒を飲んじゃう、そういうこと?」

「お酒は、お店のものだけど、お代はお客様持ちだから、正確には、お客様のお酒かしら……」

「面白いね。じゃあ、お父さんとお兄さんは、ホストみたいなものだ」

「ホスト?とてもそんな風には見えないわね。街のチーマーと、そのなれの果ての祖父さん、そんな感じにしか見えないけど……」

女は、店で酔い潰れる父親と兄の姿を、目に浮かべているように遠くを見つめた。

つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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目次

結衣との関係 』(中編)

人妻のからだ 』(中編)

終着駅 』(長編連載中)

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